キャンナス世田谷用賀の中嶋惠さん車いすの障害児とともに小学校に向かう「キャンナス世田谷用賀」の中嶋惠子さん。ピンクのTシャツがキャンナスのトレードマーク

看護師の訪問ボランティア
「キャンナス」が全国130カ所に

「キャンナス」というユニークな看護師グループが全国各地で名乗りを上げている。病院から地域に飛び出し、地域で看護、介護の訪問ボランティア活動をする看護師たちだ。その名の通り、看護師(ナース)ができる(キャン)ことをする。療養中の住民の「困った」「誰か助けて」という声にできるだけ応えようという高邁な志だ。

「入院中だが自宅に一時帰宅したい」「医師の診察に同行してほしい」「深夜に親の面倒を見てほしい」「遠くの墓参に行きたい」――。

 制度上のサービスではない。医療保険や介護保険ではかなわない。でも当人には必要なこと。その多くは家族が支えている。たんの吸引や胃ろうの扱いは医療者にしか認められていないが、家族ならいい。本人の「延長」だからだ。

「でも、その家族も時には休みたい。そこで看護のプロで、介護もできる看護師ならできる。自宅に訪問してボランティア精神を発揮して自由に手助けしたい」

 こう語るのは神奈川県藤沢市の看護師、菅原由美さん。キャンナスの命名者で、看護師たちに参加を呼びかけた。

 ボランティア活動だから、医療保険や介護保険の細かい基準に縛られることはない。活動の基本は、本人の生活を「家族に代わって」手助けすること。

 看護師が自宅や施設に赴くのには、介護保険と医療保険にある訪問看護ステ―ションという制度を利用することになる。胃ろうなど経管栄養の管理や褥瘡(じょくそう、床ずれのこと)の手当て、服薬管理、かん腸など特定の行為を医師が記した指示書に基づいて携わるが、活動時間は最長、連続で1時間半に限られる。

 ヘルパー来訪の制度も介護保険や障害者制度にはあるが、制度の枠内では収まりきらないのが普通の人の日常生活だろう。深夜来訪や診療時の受診介助などは介護保険のヘルパーは敬遠しがちだ。そうしたときキャンナスの出番となる。

 菅原さんがこの「全国訪問ボランティアの会キャンナス」の活動に乗り出したのは1997年。2007年までの11年間で、横須賀、高知、松戸、釧路、北九州など20カ所で発会式が行われ開設された。年間2カ所のペースだった。

 それが最近の5年間では、60カ所も開設された。つい最近も「キャンナス富山」「キャンナス磯子」などが立ち上がった。年間に平均12カ所という勢いである。これらを全部合わせると、2019年11月時点で全国に130カ所まで広がった。