「ながら運転」厳罰化で
事故はどこまで減らせるのか
道路交通法が改正され、この12月1日からスマートフォンを使用しながらの「ながら運転」の厳罰化が始まりました。ながら運転が見つかった場合は減点3点、普通車の場合の反則金は1万8000円になります。
さらに、ながら運転で事故を起こした場合は一発で免停となり、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるようになります。今回の罰則強化は、2016年に愛知県でスマホゲームをしながら運転していたトラックに小学生がはねられて死亡した事故などがきっかけとなり、決まったようです。
では、厳罰化でながら運転による事故はどこまで減らせるでしょうか。もちろん、一定の抑止力にはなるでしょう。スピード違反のケースで考えるとわかりやすいと思いますが、10キロ超のスピード違反をする人はたくさんいても、30キロ超のスピード違反を日常的にする人はずっと少ないです。
その理由は、10キロ超なら反則金で済みますが、30キロ超だと免停になってしまうからです。そうした差があるから、30キロオーバーで運転する人が少ないのです。ただ、厳罰化が一定の抑止力にはなっても、あくまで限定的なものに過ぎないだろうという限界もあります。
交通事故の際にながら運転が確認された件数は2018年に2790件で、これは10年前の2008年と比較すると2倍以上に増えているといいます。2008年当時でもすでに携帯電話は社会に浸透していたわけなので、最近になって件数がこれだけ増えているということは、個人の無責任だけが増加の原因とは考えないほうがいいでしょう。背景には、「文化としてのながらスマホ」という新しい問題が存在しているのです。
「文化としてのながらスマホ」とは何かというと、それはたとえば、LINEでメッセージが来たら即レスしなければならないような文化です。それは、相手からのLINEを早く見たいという前向きな理由かもしれませんし、即レスしなければ仲間外れになる、ないしは上司などの仕事関係者に叱責されるといった、後ろ向きな理由かもしれません。とにかく文化として「LINEには素早くレスしなければ失礼」という意識が定着しているのです。