『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します。
「こっちに来い!」と呼びつけられたパターン
お客さまからクレームを申し立てられたら、相手の気持ちを代弁するような言葉を投げかけ、「そうなんだよ」「そうなんです」といったYES言葉を引き出し、こちらを「味方」と認識してもらうことで、スムーズに解決に導くのが、私の提唱する「超共感法」です。
その効果は、私や私の講座の受講生が実証済みで、お客さまがYES言葉を発した時点で、ほぼ怒りは解消されます。お客さまが本当に問題を抱えて困っている通常のクレームであれば、超共感法で解決できないクレームはないと言ってもいいでしょう。
けれども、金品や嫌がらせ、自己満足を目的とした悪質クレーマーによる攻撃は話が別です。そもそも相手が解決を望んでいないのですから、超共感法でも解決しようがありません。なかには、用意周到にワナを用意しているケースもあります。
たとえば、クレームのお客さまから「こっちに出向いて謝るのが筋だろ!」と、相手の自宅や事務所に呼びつけられることがあります。「それで気が済むのなら……」と応じることが多いようですが、さらなるトラブルに発展する危険性があるため、慎重な対応が必要です。実際にあった怖いケースをご紹介しましょう。
ある小売のチェーン店で、「お前のところで購入した商品に欠陥があった。すぐに代わりの商品を持ってこい!」という怒りの電話がありました。急いで代わりの商品を手に、男性担当者が相手の指定する事務所に向かいました。
そこはマンションの一室で、表札にはたしかに電話で聞いた事務所の名前が記されています。呼び鈴を鳴らすと、「はーい」とドアから女性が顔を出しました。電話口の相手は男性だったため、取り次いでもらおうとすると、「あぁ、社長ね。まもなく戻ってくるから、ちょっと上がって待っていて」と言って、部屋に上がるように促されました。
「長引くのは嫌だな……」と思いながらも、商品だけ置いて帰って、またクレームをつけられるのはたまりません。仕方なく靴を脱ぎ、部屋で30分ほど待ちました。しかし、社長は一向に姿を現しません。さすがにいつまでも待っているわけにもいかず、先ほどの女性に商品の説明とお詫びをして立ち去りました。
会社に戻ると、正面玄関の前にパトカーが停まっています。何事かと首を傾げていると、警察官が歩み寄ってきて、「婦女暴行」の嫌疑で逮捕されたのです。もちろん、身に覚えはありません。
警察官によれば、さっきまで話をしていた事務員らしき女性から、「玄関から押し入って暴行された!」と110番通報があったというのです。
後日わかったことですが、ワナを仕掛けた黒幕は競合店の店長でした。