しかし、一見甘いドリンクであること以外に共通点はなさそうなスタバのフラペチーノとタピオカドリンク。実際に「乗り換え」が起きていたとしたら、なぜこうもスムーズにそれが実現したのか。

 実は、習慣の中身は簡単に変えられることを、行動経済学の研究結果は示している。マサチューセッツ工科大学のある神経科学者は、その研究過程において、習慣は「きっかけ」「ルーティン」「報酬」という3つの要素から成り立っていることを発見した(チャールズ・デュヒッグ氏の著書『習慣の力 The Power of Habit』より)。

消費者がスタバのフラペチーノから
タピオカへと簡単に流れた理由

 たとえば、フラペチーノ消費者の場合を考えてみよう。甘いものへの欲求や空腹感が習慣をスイッチオンさせる「きっかけ」となり、「フラペチーノを買う」というルーティン行為へと促す。そして、フラペチーノによってもたらされる満足感という「報酬」が醸成され、再びスタバへと向かわせる新しい「きっかけ」の伏線となっていく。

 さらに同氏によれば、「きっかけ」と「報酬」が一致する場合、「ルーティン」の中身は簡単に変えられるという。つまりタピオカの場合、「きっかけ」は甘いものへの欲求や空腹感、「報酬」は満足感と、フラペチーノとまったく同じ図式が成り立つ。ただ1つの違いは「ルーティン」であり、それが「フラペチーノ」から「タピオカ」に変わった点だけだ。

 タピオカ店の乱立により、生活の中でタピオカという「きっかけ」に触れる機会もますます増えている。そのため、「フラペチーノ」という習慣をリプレイスする機会が増えたのではないかと、筆者は考える。

 消費者の習慣行動の次に注目したいキーワードは、「ハーディング現象」だ。ハーディングとは、周りと同じ行動を取ろうとすることである。行動経済学者のリチャード・H・セイラー氏は、『実践 行動経済学(原題:Nudge)』の中で、行列ができるラーメン店についつい並んでしまうのも、周りがタピオカを飲んでいたらつい気になってしまうのも、「ナッジ=誘導」の力による結果だと指摘する。