また新たな委任状争奪戦が起きている――。それは、日本ハウズイングvs原弘産。日本ハウズイング(東証2部上場)は、独立系マンション管理会社の大手。一方、原弘産(大証2部上場)は山口県下関市に本社を置き、不動産開発を中心に分譲から賃貸(アパマンショップ)まで行なう不動産会社。この両社が、6月27日に開催予定の日本ハウズイング株主総会に向けて、現在激しいつばぜり合いを行なっているのである。

 事件のきっかけは今年2月。原弘産は日本ハウズイングに対し、経営統合を目的とした株式公開買い付け(TOB)の提案を行なったことから始まった。1株あたり1000円でTOBを実施し、過半数以上の株を取得。日本ハウズイングを原弘産の連結子会社化し、両社を経営統合するという提案である。

 しかし日本ハウズイング側はこれを拒否。「特定のディペロッパーと資本関係を結ばず、中立的な立場の独立系マンション管理会社としての事業モデルが崩壊し、顧客離れが進む」としており、原弘産と全面対決する姿勢を見せている。

「買収する側」「買収される側」に加え、
「もう1人の主役」が登場

 この事件が面白い1つの理由は、最近よくある「買収する側vs買収される側」という“2者の対立”だけではないこと。『もう1人の主役』がいるのである。そこには、日本ハウズイングの創業者夫人が絡む「内紛」の可能性(?)を秘めており、この“3者の関係性”が非常に面白いのである。これについては後で詳しく説明しよう。

 今回の原弘産から提案された「経営統合」についてだが、まず両社は同業者であること、また地域的にも補完する可能性も考えられることから、一般的に見て経営統合のメリットはあるように思える。

 そもそも「マンション管理業」というのは、非常に安定した収入が見込める事業である。そのため、多くのディベロッパーの再建策において、管理会社をどう取り込むかというのが大きなカギとなっている。つまり、ディベロッパー再建の中心に「マンション管理会社」が位置づけられているのである。このようなことからも、マンション管理業というのは、不動産業界の中で非常に“魅力的な存在”になってきていることは間違いない。

「狩猟型」から「農耕型」へ
変化するマンション販売

 これまでマンション販売においては、「新しく建てて売る」のが中心であった。しかし近年では、その後の「管理・メンテナンス(修繕)」、場合によっては「建て替え」までを含む息の長いビジネスに変わってきている。喩えて言えば、「狩猟民族型」から「農耕民族型」へ変化したということ。