毎日、何気なく、お風呂に入っていませんか? そうだとしたらもったいない! 「入り方次第でお風呂タイムは治療になる」と言うのは、自律神経や腸の研究の第一人者で「医者が教える長生きみそ汁」の著書もある小林弘幸先生(順天堂大学医学部教授)。
寝ても取れない日々の疲れや、肩こり・腰痛などの慢性的な痛みに、一生悩まされない体を作る、究極のお風呂の入り方を提案した新刊「医者が教える 小林式 お風呂健康法」から、入浴で自律神経と腸の働きを最大限に働きかけるにはどうすればいいのかの、エッセンスを紹介します。

「過ぎ去ったこと」や「未来の不安」……。雑念はお風呂で洗い流し新年を迎えようPhoto: Adobe Stock

現代人は肉体よりも精神が疲れている

 私が提唱している「小林式 お風呂健康法」の最後は、瞑想で締めくくります。お風呂の中で、深い呼吸とともに、感謝の気持ちで笑顔を作り、副交感神経をさらに高めることが目的です。

 しかしこれには「邪念を払う」という効果もあるのではないかと思っています。人間って、何に疲れているのかというと、肉体的な疲れはもちろんですが、それ以上に、精神的な疲れが大きく関係しています。

 その要因の一つは、「過ぎ去ったこと」。もう一つは「未来の不安について」です。
 つまり、今さらどうしようもない過去と、起こるかわかりもしない未来についてあれこれ考えることで、無駄にエネルギーを消費して、疲れてしまっているのです。
 お風呂に入るというのは、そういう色々なものを洗い流すという意味もあるのではないでしょうか。
 その日にわいてきた雑念や邪念を洗い流す。だから、夜、入浴せずに布団に入ると、邪念を背負ったまま寝ることになるので、よい睡眠を得られなくなるのです。

 なんだかスピリチュアルな感じがするかもしれません。けれども、こういう考え方は、意外と大切です。なぜなら、私は自律神経を研究している医師であり、心が体に与える影響がいかに大きいかということを、よく知っているからです。

 私は1995年から「便秘外来」を開設しており、便秘で悩んでいる方々を数多く診てきました。多くの方が、「便秘がつらい」「便秘が憎い」と、非常に思い詰めた様子で診察室に入ってきます。けれども、「ちょっとくらい便が出なくても大丈夫ですよ」と、笑顔で語りかけるだけで、患者さんの気持ちが明るくなり、便秘が治ってしまったケースがたくさんあります。便秘であることがストレスとなり、それが副交感神経の働きを低下させ、さらに便秘を悪化させているケースがほとんどだからです。それくらい、心と体は密接に関係しているのです。
 ですから、スピリチュアルであろうがなかろうが、お風呂で邪念を洗い流す。そう考えて、感謝の気持ちでお風呂に入って1日、そして1年を振り返ることは、医学的にも非常に有効だと言えるでしょう。