一向に浸透する気配のない、エスカレーターの正しい乗り方。JR東日本がエスカレーター「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーンを行うなど、鉄道事業者は周知を図ろうとしているが、定着するどころか、そもそもキャンペーンすら知らなかったという人も多い。問われるエスカレーターの正しい乗り方について、ジャパンエレベーターサービスに話を聞いた。(清談社 中村未来)

「片側空ける」は
輸送効率を下げる

エスカレーター片側空けはエスカレーターの劣化を加速させる恐れがあるほか、そもそも輸送効率を下げる Photo:PIXTA

 エスカレーターの片側空けの慣習が広まったのは、関東では1980~90年代頃、関西では1970年頃といわれている。きっかけは西洋に倣った、大阪万博だった、などとされているが、はっきりとはわかっていない。

 東京では、エスカレーターの右側を歩く人のために空けるというのがルールのようになっているが、歩行によるエスカレーターでの事故は少なくなく、東京都の発表によると、平成24年から平成28年の5年間で、6889人が救急搬送されている。

 エスカレーターの正しい乗り方について、ジャパンエレベーターサービスの広報、佐久間幸子氏は言う。

「周知の通り、エスカレーターは歩くものではありません。傾斜があり、さらに通常の階段よりも蹴上がりが高く、危険であるというのが理由です。運動能力が高い人でも転ぶ可能性があります。手すりにつかまり、立ち止まって乗るのが正しい乗り方です」

 片側だけに負荷がかかることで、機械に支障が出るという話もあるが…。

「片方に負荷がかかるからといって、ただちに変形や歪みが生じるということはありません。ただ、それが10年以上続けば、劣化に差が生じることもあるかと思います。そもそも片側空けは輸送効率を下げるので、2列になって乗ったほうがいいんです」