沓掛英二Photo by Kazutoshi Sumitomo

売上高6685億円、営業利益791億円、日本有数のデベロッパーに成長した野村不動産グループ。その中核企業である野村不動産は1957年の設立で、60年以上の歴史を持つ。そんなグループの持ち株会社、野村不動産ホールディングスの社長に2015年、新たに就任したのが沓掛英二氏だ。野村證券でおよそ30年間、証券業界に身を置き、畑違いの不動産業に足を踏み入れた。不動産業界では異色の経歴を持っているからこそ、組織の保守的な一面にも気付いた。それに対し、グループ一丸となって改革に挑んでいる。(聞き手/ダイヤモンド編集部 大根田康介)

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京都の企業から学んだキャッシュリッチの思考

――沓掛社長は長年、野村證券にいらっしゃいました。そもそもなぜその世界に飛び込もうと思ったのでしょうか。

 志望動機は単純です。野村證券は厳しい会社と聞いていましたので、厳しい環境に身を置けば自分が成長できると考えたからです。

 商社、メーカーといった一つの産業だけに身を置くよりは、証券という立場で直接金融に携わることで、いろいろな産業の成長に貢献できる仕事に夢があると考えていました。

 もちろん、そんな理想と現実のギャップはあります。新人、課長代理、課長となる過程でいろいろな苦労もありましたが、幸いお客さまに育てていただきました。私は証券が好きでしたから、お客さまに喜んでいただく、イコール、パフォーマンスを上げて利益を獲得していただく。

 証券だからもうけてなんぼの世界ではありますが、目先の利益を追い掛ける短期的思考は嫌いでした。中長期的に利益を獲得していただき、お付き合いさせていただくことを信条として、お客さまといかに関係を長く続けていけるかを常に考えていました。

 もちろん、お客さまに利益を上げていただこうとした株式の提案が、大幅に狂うこともありました。環境が激変してパフォーマンスが落ちることもありましたが、トータルではパフォーマンスの向上を実現できたと、自分の証券人生の中では自負しています。

 この経験が、今の経営戦略を構築する中で、非常に大きな土台となっています。顧客第一主義で、お客さまのパフォーマンスが上がることが会社の収益源になるというのは終始一貫していますから。