日本企業で理想的な体制づくりが進まず、強い組織ができないのは、「覚悟が足りない」からだと私は考えています。内製化を進めるには上記に挙げたような、手を動かせる人を採用しなければなりません。
また完全な内製ではなく手の内化を進めるにしても、IT活用を核とした事業変革に主体性を持って取り組むためには、ソフトウェアのことを熟知している人が社内にいなければならないし、内製すべき部分を開発する組織も必要です。しかし、体制づくりができない企業は、必要な人材の採用を怖がっています。
では、必要な人材、特にエンジニアの採用を企業が恐れる理由を詳しく見ながら、その誤解を解いていきましょう。
1つ目はプロダクト開発が一通り終わった後、エンジニアの仕事がなくなって雇用が確保できなくなるのではないかという危惧です。これは開発と運用を別のものと考えていることから起こるものですが、今のプロダクトは開発と運用は不可分で、常に進化させてサービスの質を高めていかなければなりません。
またこのご時世に、エンジニアが必要な事業が生まれないことはあり得ません。エンジニアの仕事がないとは、次の事業のアイデアもない企業であり、彼らの雇用の心配をする前に会社の将来を心配した方がいいでしょう。
2つ目は「今後技術が進化すれば、エンジニアは不要になるのではないか」という懸念です。確かに、AIでプログラムが作れるような未来は、いずれは来るかもしれません。しかし私が社会人になった30年ぐらい前から、そういう話がありましたが、現実にそんな未来は訪れていません。
確かに、昔は人がやっていた作業が自動化されている部分はあります。ただし、ITへの期待値が上がる中で、ソフトウェアに求められることも増えています。ニーズが多様化・高度化したため、常に「機械だけではできないこと」が増え続けている状況です。今後も当面この状況は続くはずで、すぐにエンジニアが不要になることはないでしょう。
3つ目は「エンジニアを雇ったことがないので、採用も育成もできない」という悩みです。この問題はもっともな悩みです。対処するには、どうにかして最初の1人となってエンジニアを育成してくれる開発経験者を採用するか、誰か外部で技術が分かる人に顧問やアドバイザーとして手伝ってもらうことで補完するしかありません。