自分でプログラミングができるところまで到達するのは難しくても、ツールを利用することでITを活用したサービスの目利きはできるようになります。自分の部下や外部委託先が提出する企画やプロトタイプがイケているかどうかの判断ぐらいはできるよう、経営層は努力すべきです。

 トヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏は取締役に就任したころに、自動車の開発には欠かせないマスターテストドライバーに師事し、自身も後に、マスターテストドライバーとしての資格を取っています。経営層になってからも学び続けることで、「現場へ行って話すときの共通言語を身に付けることができた。ドライバーや工場が何を目指しているか、自分の体験として語れるようになった」と豊田氏は語っているそうです。

 これをIT事業に置き換えれば、事業の担当役員や事業部のメンバーは、ソフトウェア開発の現場と共通言語を持てるぐらいの知識を持つべきだということになります。プログラミングができなくても、一度試しにやってみれば「設計図を機械的に置き換えるだけの簡単な仕事」というような認識がいかに間違っているか、気付けるでしょう。

 ものづくり企業では、全社員が入社時に工場実習を行うところが数多くあります。しかし、ソフトウェア開発が事業に占める割合が増えているにもかかわらず、ソフトウェア部門での実習はありません。実際、サポートぐらいしかできないでしょうが、数週間から数カ月体験してみれば、実際の開発がどう進むのか学べるはずです。

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 では、ITの内製化を進め、強い組織をつくるには、どのような職種・役割の人で構成すればよいのでしょうか。シリコンバレーでも見られる、一般的にソフトウェア開発に必要な役割は、以下のようなものです。

●プロダクトマネジャー

「ミニCEO」とも呼ばれる。プロダクトに責任を持ち、技術面、ビジネス面、ユーザー体験(UX)面をバランスよく理解して、プロダクト開発を主導する役割。

●ソフトウェアエンジニア

 プロダクトの仕様や方向性を理解し、プログラミングほか、ITテクノロジーを駆使して形にする役割。

●エンジニアリングマネジャー

 ソフトウェアエンジニアを取りまとめ、人と組織の成長に責任を持つ役割。中長期的にソフトウェアエンジニアが成長し、組織もともに成長することで事業に貢献する。

●デザイナー

 ソフトウェアが提供したいユーザー体験を踏まえて、ユーザーインターフェイスを設計し、エンジニアと協力してデザインに落とし込む役割。