就職氷河期世代の支援に
引きこもり支援を組み込む違和感
2019年は引きこもり支援のあり方を巡っても、いろいろと考えさせられる1年だった。
川崎の通り魔事件や元農水事務次官の長男殺害事件以降、世間の敵意が「引きこもり」に向けられ、当事者に対する暴力的支援が横行した。その後、元次官は実刑6年の判決を受けながら、高裁で保釈が認められ、12月25日には高裁に控訴した。
まるで、「引きこもるような人は殺されてもいいし、暴力的支援に遭って何をされても構わない」というメッセージが、社会に蔓延しているようにも感じられる。
12月23日、政府は3年間で就職氷河期世代の正規雇用者30万人増を目指す『就職氷河期世代支援に関する行動計画2019』を発表した。この日、KHJ全国ひきこもり家族会連合会も内閣府に呼ばれ、西村大臣から直接、説明を受けた。
当連載でも度々指摘してきたように、就職氷河期世代は希望する就職ができずに、現在も不本意ながら不安定な仕事に就いていたり、無業の状態が続いたりしている。本人だけでなく、家族全体でさまざまな課題に直面している事例が多い。
内閣官房に就職氷河期世代支援室を設置し、地方で使える基金を30億円用意。30万人を正規雇用する支援策は、いいことだと思う。
ただ、このプログラムは、そもそもの段階で経済団体側からの意向を受けた構築になっていて、当事者側の意向が反映されていなかった。
就職氷河期の問題が理由で引きこもった人たちもいて、もっと早く打ち出されていれば、救われた命もあったであろう。ただ、就職氷河期世代支援の中に、全世代が支援対象となる「引きこもり支援」を組み込まれることには、やはり違和感がある。