一つは店舗改革など、実践力や遂行力を発揮し、率先していろんな変化に取り組んできた自負があります。リアルとインターネット双方で標準的かつ利便性が高い決済プラットフォームをつくるなど、デジタライゼーションもあらゆる領域で手応えを感じています。

総予測2020#7_三井住友銀行頭取インタビュー
Photo by M.K.

 ホールセールでは、中堅中小企業向けに「ビズクリエイト」というビジネスマッチングのウェブプラットフォームを開発しました。企業に具体的なニーズを登録してもらい、検索やチャットを通じて、商談に発展させるサービスです。すでに19年5月の事業開始から半年以上たちますが、足元で2000社以上が登録し、商談に進んだ案件が300件以上あります。

 さらに今、この取り組みを一緒にやりませんかと地方銀行に声を掛けています。実現すれば、商談の内容によっては地方における資金需要の可能性が出てきますし、地方創生や事業承継といった大きな課題の解決につながるでしょう。

M&A数は拡大基調
総合力で案件を逃さない

──20年に注力する事業分野は。

 今の中計の方向性は次の3年間も変わりません。各事業部門で出した成果を、スピード面や量的に拡大していくことになります。

 リテールといった国内業務は、ボトムライン(最終損益)の収益性を上げる勝負であり、店舗改革などに磨きをかけてサービスの生産性を上げていきます。さらにホールセールではグループの総合力が重要であり、その際のキーワードがクロスボーダーです。

 三菱商事と中部電力が共同で蘭総合エネルギー事業会社の買収を発表したり、旭化成が米製薬会社の買収を発表したり、またグローバルな案件では仏LVMHが米ティファニーの買収を発表したりと、年末にかけて大きな買収合意の発表が出てきています。

 これは20年の経済情勢(後述)を織り込んだ動きかもしれません。この半年から1年弱にかけてトーンダウンしていた企業のこうした動きは、もっと拡大するでしょう。そこに私たちがしっかり関与することが、ホールセールや国際部門のテーマです。

――2020年は世界経済や銀行業界にとってどんな一年になると予想しますか。

総予測2020#7_三井住友銀行頭取インタビュー
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 私たちは今、2020年度からの新しい中期経営計画に向けて、社内であらゆる議論をしているところです。率直な感想ですが、20年がどんな経済環境になるか、見方は割れています。

 そうした中で20年の経済環境について言えば、リスクファクターは満載でありながら、中期的に一定の底打ちを探る1年になるのではないかと感じています。

 長期的には米中の技術覇権を巡る動向への懸念が強く、これは数年間で早々に解決する話ではありません。それに伴ういろいろなリスクは否定できないでしょう。しかし同時に、製造業など一定の業界において底打ちを感じているという見立てが出てきています。

 少し前までは、製造業を中心にセンチメント(市場心理)が世界的に悪化し、それに伴って業績が悪化したり、設備投資を控えたりする動きが出ていました。

 この傾向は今も続いています。ただその中でも、特に米国の企業において、底が見えつつある業界セクターが着実に出ています。20年のしかるべきタイミングで、製造業に関連する企業の業績が底を打ち、その後は緩やかに改善に向かう。つまり、世界的に景気の後退局面が底打ちを探るという可能性を秘めている年ではないかと思っています。

 米国の株価や、それに釣られて動く面がある日本の株価も、そうした要素を織り込みつつあると感じています。

 そういう意味では、銀行業界にポジティブな要素が出てきてもおかしくないですが、20年も引き続き、銀行業界に逆風が吹くことを残念ながら否定できません。

 このような状況であればあるほど、銀行はいろいろなかたちで従来とは異なる事業モデルを追求しないといけません。そうしたトランスフォーメーションにチャレンジしているかという実践力が銀行に問われる1年、もしくはそれにより、銀行の優勝劣敗がより鮮明化する1年になるでしょう。

たかしま・まこと/1958年3月生まれ、広島県出身。82年京都大学法学部を卒業後、旧住友銀行に入行。2012年三井住友銀行常務、16年専務、17年4月より現職。