池上彰_ヴォーゲルPhoto by Chisato Hikita

日本でも70万部の大ベストセラーとなった、米ハーバード大学名誉教授のエズラ・ヴォーゲル氏の著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』。1979年に発売されてから、40年がたつ。この間、中国は急速に経済力・軍事力で存在感を増し、米国は「アメリカファースト」を掲げるトランプ大統領の下「世界の警察」の地位から降りようとしている。そんな中で、日本はどうあるべきか。1年で最も売れる「週刊ダイヤモンド」年末年始の恒例企画をオンラインで同時展開するスペシャル特集「総予測2020」。今回は、日中両国と半世紀以上の交流があるヴォーゲル教授と、日米中の政治・経済に詳しい池上彰氏が語り合う。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局 柴田むつみ)

中国が日本より
上位にいた時代の方がずっと長い

池上彰氏(以下、池上) ヴォーゲル教授がベストセラー『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を世に送り出して、ちょうど40年になります。発売当時、日本人の一部は「Japan as No.1(世界のトップとしての日本)」というタイトルを「Japan is No.1(日本は世界のトップだ)」と誤解して、「日本は世界のトップなんだ」と油断し傲慢になった気もします。

エズラ・ヴォーゲル氏(以下、ヴォーゲル) それで、ベストセラーになっちゃったのかも(笑)。私の意図としては、日本の社会構造を支える義務教育の水準や品質管理のレベルの高さなどを、米国人にもっと知ってもらい勉強してほしかったのです。経済大国として良いという意味ではありませんでしたが、誤解された面もあったようです。敗戦後、自信を失っていた日本人が、高度成長期を迎えて自信を持ち始めた時期とも重なっていました。

池上 最近は、「Japan was No.1(日本は世界トップだった)」だったんじゃないか、と言う人もいますが、いかがですか。