イラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官が米軍の空爆で死亡した。イランはこの10年、ソレイマニ氏の指揮により中東での勢力拡大に成功したが、今回の事件はそれを中東の市民が脅かしつつあるタイミングで起こった。特にイラクではイラン政府の支配の影響で、イランに多いイスラム教シーア派が孤立を強めている。昨年にはシーア派の聖地にあるイラン領事館への放火が相次いだ。レバノンでも昨年10月から反政府抗議行動が起こり、親イランのイスラム教シーア派武装勢力ヒズボラが実効支配する政治体制に反旗を翻した。シリアではコッズ部隊とレバノン、イラク、アフガニスタンなどから集まったシーア派武装勢力の支援により、内戦が9年近く続く中でもバシャール・アル・アサド大統領がまだ権力の座を維持している。だがここでもやはり支配力を強めようとするイランの取り組みは、イスラエルの空爆、さらにはロシアとトルコによる新たな調停の動きによって揺らぎつつある。その一方でイランに「最大限の圧力」を加えるとする米国の制裁により、コッズ部隊が中東で協力先に提供できる資金は枯渇し、イラン国内での社会不安にもつながっている。