プロモーションなしで売れる本を

「この本は100年残るから<br />安っぽい本にしちゃダメ!」<br />書店員が編集者に断言した理由寺田庸二(てらだ・ようじ)
担当書籍は『哲学と宗教全史』『ザ・コピーライティング』『志麻さんのプレミアムな作りおき』『カヨ子ばあちゃん73の言葉』『第一人者が明かす光触媒のすべて』『1坪の奇跡』など。『社員15倍!見学者300倍!踊る町工場』で処女作21作連続重版へ挑戦中。生涯142冊、重版率8割。野球歴14年。技術と精神がドライブがかった本を、孫の世代まで残る本を、光のあたらないところに光があたる本を。

――あのとき、どんな気持ちでしたか。

百々 年々、業界自体が衰退してきている理由は、出版社が目先の決算を意識した本ばかりをつくってきたから。そのときだけ売れるけれど、消えていく本も多い。
そんな本ばかりだと、書店の店頭の魅力度が低くなってくる。何年か前までは、テレビで取り上げられたら売れた。確かに今もその傾向はある。だけど、みんながみんな、そんな本ばかりつくっていていいのか
僕はずっとそう思ってきた。骨太な本がほしい。
こういう時代だからこそ、
プロモーションなしで売れる
魅力のある本がほしい

古典はみんなそうでしょう。ダイヤモンド社にもいまだにそういう本がたくさんありますよね。

――確かに。

百々 プロモーションやテレビパブなしで売れる本ばかりだったら最高じゃないですか。

――最高ですね(笑)。

百々 いい方が悪いかもしれないけれど、最近はどうでもいい本をパンパンつくって、一瞬は売れるけれど、翌年にはもう書店の店頭には在庫がないような本ばかりになっているから、書店に行っても楽しくない。この作家でこのテーマだったら最高という本ばかりだったら、書店の店頭も楽しいでしょう。
そう思っていたら、今回、出口治明さんの『哲学と宗教全史』のゲラが寺田さんから送られてきた。
僕が好きな著者は、深く広いテーマの本を書いている人。出口さんはまさにそう。僕は出口さんの大ファンだから、出口さんには流行に左右される本を書いてほしくない。
出口さんの本を買ったお客さんを見て、自分の本棚に買った本をさしているところを想像すると、カッコよくてニヤニヤしてしまう、そんな本がいい。
買ったことを自慢したり、人に教えたくなる本にしてほしかった。
出口さんほどの教養人はなかなかいませんから。

――百々さんと初めてお会いしたとき、その気迫は痛いほど伝わってきました

百々 これまでの出口作品の中で「A5版ハードカバー」は皆無でしたからね。

――はい、今回が初です。

百々 僕から見ると、四六判のソフトカバーは出版社がロングセラーにする意志がないというサインにも感じます。

――そうなんですか!(驚)

百々 今回は絶対にA5版ハードカバーにしてほしかった。
出口さんは知性にあふれている方。特に、今回の『哲学と宗教全史』は本当にすごい量だし、読んだら物語だったし、深みもすごかった。