昨年12月12日、ヤマダ電機は大塚家具に約43億円を出資して株式の51%を取得し、同社を子会社化すると発表しました。大塚家具は2016年以降、赤字が続いており、売り上げも減少しています。
そうしたなかで、ヤマダ電機が業績不振に陥っている他業種の大塚家具を傘下に入れる狙いはどこにあるのでしょうか。また、大塚家具はヤマダ電機の傘下に入ることで、業績を回復できるのでしょうか。
今回は、ヤマダ電機の狙いについて、アンゾフの「成長マトリクス(Product - Market Growth Matrix)」および「シナジー(synergy)効果」を用いて解説します。(グロービス経営大学院教員 金子浩明)
子会社化の理由をアンゾフの成長マトリクスで読み解く
イゴール・アンゾフ(1918-2002)は経営戦略の父と呼ばれ、軍事用語の「戦略」という用語を経営理論に初めて用いた人物です。アンゾフによると、企業の成長戦略は「製品」と「顧客市場」の組み合わせにより4つのタイプに分けられます。
ヤマダ電機による大塚家具の子会社化は、多角化戦略に該当します。家電量販店と高級家具販売店では扱っている商品が異なるうえ、顧客層も同じではありません。ヤマダ電機の顧客は家電を購入したい消費者全般であるのに対し、大塚家具の主な顧客は富裕層と婚礼家具を背伸び買いする消費者です。また、大塚家具は法人顧客もターゲットにしており、オフィスやホテルの客室、商業施設などへの納入に力を入れています。
なぜ、ヤマダ電機は経営再建中の大塚家具を子会社化したのでしょうか。アンゾフは、企業が多角化戦略を採用する理由として、次の5つを挙げています。それが、未利用資源の有効活用、魅力的な事業の発見、既存事業の衰退、リスク分散、シナジー効果の追求です。今回のケースは、「既存事業の衰退」と「シナジー効果」が多角化の動機だと考えられます。
ヤマダ電機の営業利益は、2017年から2019年度まで3年連続で減少しています(578億円→387億円→278億円)。この期間、売上高は伸びていますが(1兆5639億円→1兆5738億円→1兆6005億円)、それでもピークだった2011年度(2兆1532億円)の7割程度にとどまっており、既存事業だけでは成長が見込めない状況です。