昨年は景気後退リスクに先手を打ったパウエルFRB議長。次の一手は? Photo:Federal Reserve

 年初の金融市場は地政学リスクのヘッドラインに埋もれて米連邦準備理事会(FRB)の金融政策運営に関する議論がすっかり注目されなくなっている。しかし、やはり1年の相場を占う上で、昨年実施された3回の「予防的利下げ」が果たして成功裏に終わったと考えるべきかという問いに向き合うことは重要である。

 極端な話、成功だと考えるならば、今年は利上げに復帰できる可能性も検討しなければならない。この点、頻繁に引き合いに出されるように、2019年の政策運営はアジア通貨危機(1997年)やLTCM危機(1998年)を受けた1998年の利下げと比較されることが多い。

 当時の利下げは、グリーンスパン元FRB議長の下、1998年9~11月の3カ月間で75ベーシスポイント(bp、25bp×3回)が行われ、翌1999年6月から再び利上げ軌道に復帰している。これが景気後退を防いだ一方、いわゆる2000~01年のITバブルの生成と崩壊につながったことは良く知られている。

 より詳細に振り返ると、フェデラルファンド(FF)金利は1998年9~11月の3カ月間で5.50%から4.75%まで下げられたが、翌1999年6月から利上げ軌道に復帰し2001年1月までに6.50%まで引き上げられた。この過程で起きたのがITバブルの生成と崩壊だった(図表参照)。

 こうした1998~99年の経験をもとに予防的利下げの功罪を整理すれば、「功」は景気後退の防止、「罪」は資産価格の高騰(端的にはバブル)だったということになる。ゆえに1998~99年の経験を今次局面に重ね合わせると、「2020年は1999年のようにバブルを懸念して利上げ軌道に復帰するかどうか」が1つの問題意識になるはずだ。予防的利下げの成否は、この資産価格の調整をショックなく制御できるか否かにかかってくる。

 ちなみに、2019年3月、エバンス・シカゴ連銀総裁は当時(1998~99年)の政策運営を高く評価した上で現状が酷似していると指摘している。同総裁は当時、シカゴ連銀スタッフの1人として米連邦公開市場委員会(FOMC)に参加していた。クラリダFRB副議長も同様の主張を展開していたことで知られる。

 2019年に行われた予防的利下げの後、主要株価指数が騰勢を強めているため、1998~99年のように、利上げ軌道に復帰する芽がないわけではない。後述するように当時はその株価の騰勢がそのままITバブルの生成・崩壊ということになったことを思えば、なおのこと、その思いは強まる。