がん闘病写真はイメージです Photo:PIXTA

 先月、日本肺癌学会から「患者さんのための肺がんガイドブック」(金原出版)が刊行された。

 この数年で肺がん治療が大きく進化したことを受けたもので、同学会が患者・家族向けに疾患解説書を出すのはこれが初めて。

 患者会の代表も編集委員として参加し、難しい専門用語の見直しや、医療者の間では「常識」でも一般人からは「なぜ?」と感じる疑問に答える内容になった。

 目次をみると、検査、診断から治療の内容、緩和ケア、リハビリテーションや痛みを取る治療など、発症後に経験する場面ごとにQ&Aが設けられている。最新のゲノム医療や遺伝子パネル検査の話題のほか、免疫チェックポイント阻害剤のメリット、デメリットについても掲載された。

 このほか、詳しい情報を求める人へのアドバイスやちまたにまん延している「フェイク情報」を見分けるコツも記載されている。診断直後の混乱した時期や、入退院の節目、毎日の生活で不安を感じたときに手にしたい一冊だ。

 さて、ガイドブックをうまく利用するために、もう一つ「重要な面談にのぞまれる患者さんとご家族へ──聞きたいことをきちんと聞くために」(国立がん研究センターがん情報サービス)という小冊子を紹介しておこう。

 同冊子は、患者の意向調査と専門医へのインタビューを基に作製された。主治医との面談に際して、症状や治療、生活についての質問例が記載されており、患者・家族は「その治療が効く確率は何人中何人ですか?」など、聞きたい質問にあらかじめ○印をつけ、準備しておくことができる。

 この小冊子の利用、非利用で比較した結果、小冊子を使うことで「質問しやすくなった」「これからも(小冊子を)使いたい」「治療方針や内容を理解するうえで役立った」など、患者本人からも有用性が高く評価されている。

 適切な治療に欠かせないのは担当医、看護師など医療チームとのコミュニケーションだ。貴方やご家族が肺がんと診断されたときは、ガイドブックと小冊子を片手に臆せず質問をぶつけてみよう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)