三菱UFJファイナンシャルグループPhoto by Takahisa Suzuki

1月17日、国内最大の金融グループである三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)がトップ交代人事を発表。4月に亀澤宏規副社長が社長に昇格する。亀澤氏の社長抜擢は従来の銀行業界の慣習や「三菱の常識」に照らし合わせると、異例づくしだ。しかし、現代においては歴史的必然を象徴するトップ人事だといえる。その理由を解き明かそう。

「週刊ダイヤモンド」2018年7月28日号の第1特集を基に再編集。肩書や数字などは最新のものに改めた

三菱UFJ次期トップ亀澤氏の
運命を変えた「首脳級会談」

 今から約6年前、国内最大の金融グループである三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の“首脳級会談”で重要な人事が決まった。

「海外に送りたいやつがいる」――。三菱UFJFGのトップを務める平野信行社長(当時、現会長)に、田中正明副社長(当時、現日本ペイントホールディングス会長兼社長CEO)がそう切り出した。

 そのとき田中氏が名前を挙げた人物とは、新たな三菱UFJFGのトップに就任することが決まった亀澤宏規執行役員(当時、現副社長)その人だった。当時は市場企画部長を務めており、「誰もが投げ出したくなるような複雑な企画業務を淡々とこなしていた姿が目に留まった」のだと、田中氏は周囲に語っている。

 その提案を受けた平野氏はGOサインを出す。亀澤氏はFG傘下の三菱東京UFJ銀行(当時、現三菱UFJ銀行)の米州本部副本部長として、米国に飛び立った。

 平野氏はある取引先の社長に「この話があるまで彼のことは詳しく知らなかった」と話している。三菱UFJFGの次代を担うことになる亀澤氏を、当時のグループ総帥が視界にはっきりと捉えた瞬間だった。