ここ数週間の間に世界で起きた一連の出来事を見ると、トランプ政権が敵味方を問わず、米国の経済力を――関税や制裁などを通じて――争いに対する地政学上の武器として利用していることが分かる。そうした戦略は多少の短期的な利益をもたらしてはいるが、長期的には世界に対する影響力を失う可能性があるなどのリスクも抱える。トランプ政権は中国に対して、より多くの米国製品を買わせ、米国企業の扱いを改善するために関税を使った。イランに対しては核開発プログラムをめぐり制裁による圧力を強化。駐留米軍についてイラクと対立すると、同国政府がニューヨーク連邦準備銀行に保有する資金へのアクセスの制限を検討した。ロシアに対しては、同国産ガスをドイツに運ぶパイプライン建設プロジェクトに参加する企業を対象に制裁を科すと警告し、ドイツ政府をも苦しめている。