誰でも負け試合の分析がしやすくなった

 昔は、普段の対戦はもちろん、大会でも、試合を記録用に録画する環境が限られていました。勝ちも負けもプレイの中で経験し、覚えていくしかなかった。個人の要領の良し悪しが、今以上に出てしまう環境だったのです。
 現在は夢のような時代になりました。オンラインにおける対戦は全て記録され、ゲーマーの名前で検索をかければ誰の試合でも録画で観戦することが可能です。しかも、キーディスプレイという、レバーやボタンをどの手順で動かしたのかの記録まで閲覧できるのです。巻き戻しもスローも自由自在。これを利用しない手はありません。
 便利な機能を利用することで、試合で熱くなりやすかったり、要領があまりよくないタイプの人でも自分を客観視できるので、ハンデを埋められるのです。

 負けた試合は情報の宝庫です。「負けに不思議の負けなし」などの言葉の通り、負ける原因は可視化されている部分が必ずあるものです。
 今でも僕は、大会以外でも、自前の録画機を持っていってあらゆる対戦を記録し、自分が負けた試合を繰り返し見るようにしています。録画の分析で大切なのは、最初の段階では「質より量」です。注意深く1試合を見るよりも、膨大な試合を次から次へと見ていくことで「また同じようなことをしているな」という自分の癖やあからさまにはわからなかったミスに気づく。その積み重ねによって、今度は細かい部分に注意が向いたり、新しい見方を手に入れたりと、質も向上していくのです。

 ちなみに、勝っている試合は試合前に気持ちを高めたいとき以外、基本的にはあまり見ません。勝っている試合を見ると自信がつくという人もいますが、それは少し疑問です。自信がつくことと、気分が上がること。これは似ているようで異なります。気持ちよくなることで、強くなるのに必要な不安を覆い隠すことになってしまうかもしれません。負けた試合こそが、今の自分に必要なものを教えてくれる。僕はそう考えています。