乳房のリスク低減切除により
死亡リスクは半減させられる

――検査法や治療法はどのように変化していますか?

 アンジェリーナさんのときには、彼女のように、母親が卵巣がんで亡くなっているといった家族歴がある場合に限って、遺伝子検査が行われていました。彼女は両側の乳房を切除した後、卵巣の切除手術も受けています。

 でも今は、個々の患者さんに合った治療薬を見つける目的で、すべてのがん患者さんに対して遺伝子検査が行われるようになっています。「がん遺伝子パネル検査」というのですが、この6月1日からは保険適用が開始されました。がんに関連する遺伝子変異を次世代シーケンサーという解析装置を使って一気に調べるのです。(現在この検査が受けられるのは、がんゲノム医療中核拠点病院11病院と、それらと連携する病院156施設 ※2019年4月1日現在)

 そういった場合、遺伝子検査ですから、患者さんご自身だけでなく、お嬢さんの乳がんになりやすさも分かります。

 すると、たとえ自分にはよい治療薬が見つからなかったとしても、お嬢さんには、がんにならないよう予防してほしいと願うケースも出てきます。

――お母さんの治療のための検査が、お嬢さんの予防にもつながるのですね。

 そうですね。もう巷(ちまた)にどんどんゲノム医療が入り込んできて、実際、2018年に日本乳癌学会のガイドラインは、遺伝子変異による発症リスクの高い乳がん患者さんに対して、カウンセリング体制の整備等を条件に、がんでない乳房の切除を「強く推奨する」に改定しました。

――日本乳癌学会は、そのような場合のリスクを減らす切除の公的保険適用も要望しました。

 遺伝性乳がんの患者さんががんのない乳房を切除すると、しなかった人と比べて死亡リスクを半減させられることが海外の複数の研究から分かっています。

 でも、そのような切除は保険適用外なので、費用は全額自己負担になります。施設ごとでも異なりますが、乳腺の全摘出と再建術で100万~200万円と高額なため、受けたくても受けられない患者さんがでてきます。

 保険適用になったからといって、患者さん全員が切除を希望されるわけではありません。でも、少なくとも、希望される患者さんは全員、経済的な状況によらず切除を選べるようサポートする道を作ることは必要だと思います。