死へのダイブを踏みとどまった、引きこもる息子と母親の葛藤記母親の発想の転換により、引きこもる息子が自ら登校するまでに回復。何があったのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「引きこもりは引き出せばいい」
言説の誤りに気づいた母親の再生

 前回の「『引きこもり』支援者に根強い“引き出せばいい”という錯覚の罪」という記事に対しては、大きな反響が寄せられた。その多くは、引きこもる子の生活を支える親や、将来を懸念する兄弟姉妹といった家族からだった。

 中には「引きこもりを肯定するとは、けしからん」といった批判のメールもあったが、大半は「同感する」「共感した」などと賛同する反応だった。また、引きこもる本人からも、これまで傷つけられてきた自分自身の経験や心情を綴ったメールが、何通も届いた。

 そんな数多くの反響の中から、今回は、「もしよろしければ取材をしていただき、自分の子どもの不登校・ひきこもりについての経験、対処、方法をお伝えしたい」と申し出てくださった、母親A子さん(50歳)の話を紹介したい(読みやすいように、一部原文を加筆・修正しています)。

「血が滲むほど、自分の考えを変えていったら、子どもも少しずつ変わっていきました」

 こう感想を送ってきたA子さんの長男は、中学1年のときから不登校になり、引きこもった。現在は、高校3年生になって学校に復帰し、4年制大学を受験するために勉強中という。

 A子さんは、こうメールで説明する。

「小さい頃から育てにくく、他の子どもたちと全然違いました。育てにくいので必然的に厳しく向き合い、その子に合った育て方をしなかったので、結果、不登校・引きこもりに。私は親として抜本的に考え方を変えなければいけませんでした。人として何十年も生きてきた考え方を変えないといけないぐらいでした」