「部下を守る」手立ての最後は、「部下が問題を起こしにくい環境をつくる」。食品メーカは再発防止策を講じました。

 社外に持ち出してよい書類と持ち出してはいけない書類を明確に分ける。書類を持ち出す場合には「持ち出し簿」に日付や時間と氏名を記入し、管理体制を整える。そして万が一、紛失したら、今回のように速やかに上司に報告する。上司は正直に報告してきた部下を糾弾しない。

 こうして「部下が問題を起こしにくい環境」をつくった食品メーカーでは、この一件の後、書類を紛失するような事件は起きていません。

トラブルは必ず起きる。だからこそ!

 どんなにモチベーション高く仕事をしていても、どんなに気をつけて仕事をしていても、問題は必ず起きます。仕事は人間が行うものであり、こちらの事情だけでなく相手の事情も関わってくるからです。

 しかし、問題が小さいうちに先ほどの(1)~(3)の手を打ち、対処することができれば、部下を厳しい立場に追い込まずにすみます。

 迅速に手を打つために大切なこと。それは、正直に問題を報告する姿勢です。

 先ほどの事例で「部下が正直に報告しなかった場合」を考えれば、その大切さがよくわかります。「書類を紛失した」という事実を知らなければ、上司も手の打ちようがありません。すべての対応が後手後手に回り、取引先に謝罪に出向いても「なぜ今まで隠していたんですか」と追及を受けるでしょう。出入り禁止や取引停止といった重大な問題にもなりかねません。

 ただ、仮に部下が正直に報告してきても、先の(1)~(3)の手が迅速に打てないケースがあります。

 リーダー自身が「正直」でない場合です。