「チーム」から「チーミング」へ
進化を遂げたゆるぎないプロジェクト・チームは、現在でも多くの分野でみごとに機能している。企業は相応のスキルを持つ適切な人材を集めて育て、信頼の醸成に時間をかけることで、大きな仕事をなしうる。
たとえば、シモンズ・ベッディング・カンパニーでは、従来型チームのおかげで、2000年代初頭、業務上の無駄の削減、販売促進、取扱店との関係改善ならびに強化が実現し、同社の再生を成し遂げた。
これらのチームでは、メンバーの要件は明確に定められ、各グループは業務全体における担当部分をよく理解していたうえ、まったく新しい種類の仕事には携わる必要はなかった。
こうした従来型チームは数々のプラスの成果を上げた。たとえば、一時解雇をすることなく、初年度だけで業務コストを2100万ドル削減した。売上げや顧客満足度も向上し、社員のやる気も劇的に改善した。
しかし、ここで留意すべき点は、当時のシモンズと、今日の多くの企業との間に見られる違いである。当時は、顧客の好みがそれほど大きく変動することはなかった。また、事業は完全に国内に限られ、目標達成のために超えるべき垣根はなかった。
対照的に、チーミングが必要な状況とは、複雑で不確実性が高い。すぐに方針変更が必要な予期せぬ出来事が頻発する。似たようなプロジェクトなど存在しないので、まったく新しいテーマが出てくれば、そのつど、取り残されないよう素早くフォローし続けなければならない。また、どこに問題解決のソリューションがあるやもしれぬため、だれもがメンバーに加わる可能性がある。
結果として、チーミングにはさまざまな垣根を超えることが求められ、それにはリスクが伴う。専門家たちはそれぞれ分野が違うために、仲間内の専門用語で話し、自分の規範を重視し、専門知識に頼るので、衝突も多い。
部門や組織が異なれば価値観や優先順位が噛み合わないこともある。部門が異なり職位に差がある2者がペアを組んで仕事をする場合、指揮命令系統や階層の序列があるため、反対意見が封じ込められることも多い。
グローバルなチームの場合は、時差やeメールのやり取りが原因で、誤解が生まれたり、業務遂行上の混乱が起きたりするおそれがある。さらに言えば、仕事上の関係が短期的なものなので、新しい同僚との仕事の進め方や、相手の強みや弱みを理解し受け入れるのに時間を割いてもいられない。
ウォーター・キューブの設計においても、垣根を超えた活発なコラボレーションが求められたが、意見の相違は山ほどあった。