2014~18年のサンフランシスコの年平均GDP成長率

米国で広がる都市間の成長力格差、成長政策を巡る競争が鍵出所:オックスフォード・エコノミクス

 トランプ米政権の経済政策への賛否のバラツキが示すように、米国は地域によって経済構造や産業構成が大きく異なる。米国への投資に際しても国ベースだけでなく、都市圏別の成長予測の視点が重要だ。

 米国のGDPの3分の1以上をカバーする十大都市圏の2014~18年の年平均GDP成長率を見ても、最も高いサンフランシスコは5.3%と全体平均(2.6%)の倍以上の成長率を記録。一方、最も低成長であったヒューストンは1.0%にとどまるなど、都市間の成長力格差は大きい。

 弊社は世界の7000超の都市の成長予測を行っているが、予測の基本は供給サイドの産業構成にある。この点、サンフランシスコはハイテク勝ち組産業を多く抱え、23年までを展望しても年平均2.7%と十大都市圏トップの成長率を維持する見込みだ。

 逆に、かつての伝統的な製造業の中心であった中西部のシカゴ(同1.5%)は苦戦。ボストン(同2.7%)やニューヨーク(同1.9%)といった東海岸の都市は、バイオテクノロジーやメディアといった成長産業は持ちつつも、金融業のシェアの大きさが足を引っ張る。

 ただ、都市の成長力は産業構成だけでは説明し切れず、弊社の予測手法では都市圏ごとの固有要因(人口動態、コスト、規制環境、労働者の質)の寄与も勘案される。

 良い例はダラス(同3.6%)で、その産業構成は勝ち組産業ばかりではない。しかしながら、ダラスでは、低い税負担、安い賃金や住居費、緩い規制によって、企業や労働者が中西部、東海岸、カリフォルニア州などから移転し、経済の好循環が起きている。テキサス州の放任主義的な土地利用規制の下で、過去5年の人口当たり住宅着工件数はサンフランシスコの2.7倍に上る。

 このように、都市間で成長産業を育成・誘致し、成長力促進のための規制見直しが競争的に実施されていることが米国経済のダイナミズムにつながっている。わが国の地方創生でも、成長力促進につながるような都市間の政策の競争を促すことが求められる。

(オックスフォード・エコノミクス在日代表 長井滋人)