テストの点で測れない「非認知能力」=「考える力」「やり抜く力」「折れない心」の土台は、親が子どもの話を聞くことから作られる! 『自己肯定感で子どもが伸びる12歳からの心と脳の育て方』の著者で、30年以上臨床の場で多くの親子を見続けている医師が断言します。本連載では、子どもの脳を傷つけないで「あと伸びする子」に育てるためのノウハウを、著者が接してきた実例とともに紹介していきます。子どもへの接し方に悩むすべての大人、必読!

日本の小学校になくて幸福度世界一のオランダの小学校にあるものとは?Photo: Adobe Stock

自分は大事にされているという、根底の自信

 「自己肯定感」が高いと、自分のよいところも悪いところも、どんな自分も認めることができるのです。それは今だけでなく、将来にわたって自信の源となる、しっかりした心の土台があるということです。心の土台がしっかりしていると、生きていく意欲や、やる気、前に進むエネルギーが生まれます。たとえ挫折を経験しても、折れずに立ち上がる、心の強い大人になっていけるのです。

 「自己肯定感」が高い人は「やればできる」という自信があります。「やればできる」という自信があれば、何事にも挑戦しようとします。困難や新しい体験であっても、身がすくむような高い壁ではなく、乗り越えることができる壁として見られるようになります。やってみて失敗しても、失敗から学ぶことができると前向きに考えるのです。そういう人は、どんどん挑戦して経験を増やして、さらに自信をつけていきます。

 やればできるという自信は、「やってみて、できた!」という小さな成功体験の積み重ねによってついてきます。オランダの事例を紹介しましょう。

〈事例〉オランダの小学校の場合
平等(equal)と公平(fair)の違いとは?

 以前、私がオランダで小学校を見学したときのことです。
校長先生に案内していただき、授業中のクラスにも入りました。授業中の子どもが生き生きしているのが印象的でした。すると授業を行っている先生が、子どもたちに向かって問いかけたのです。

 「日本からのお客様が来ています。何かお話ししたい人はいますか?」
そうすると、何人もの子どもが手を挙げてくれました。そのなかの1人が言ったのです。
「ぼくは走るのが苦手で、競争するといつも負けていたので、みんなと相談して少し前からスタートすることにしたんだ。先生も認めてくれたよ。そうしたら勝ったり負けたりして楽しくなったよ」

 平等(equal)をよしとする日本の学校では、まずできないことでしょう。このクラスではどうしたら公平(fair)になるのかを考え、苦手な子のハンディをなくすことを当然のように認めていました。「いつも負ける」という失敗体験を積み重ねることを避け、努力をすれば成功することもあるというレベルを設定して、成功体験を重ねさせる。このような積み重ねで「自己肯定感」を育んでいるのでしょう。

 この子は次のような話もしてくれました。
「次のスポーツのときも、ぼくがルールを提案すると、先生が『よいルールだね』とほめてくれた。どうしたらみんなが楽しめるのか、いつも考えているんだ」

 苦手があっても、その自分を肯定的に捉えて、対応を提案する。周囲もそれを認めてくれる。オランダと日本の子どもの「自己肯定感」の差は、調査するまでもなく明らかだと実感しました。

(次回に続く)