「素直でいい人」=「変化に対応できる人」を採用する
北野 では「こういう人は絶対に採用しない」という採用基準はあるんですか?
曽山 離職率30%だった頃の人事改革で決めたのは、「素直でいい人」を採用することです。素直さって、人に対するものじゃなく物事に対する素直さ。要するに、「変化に対応できる力」なんですよね。
何かが流行ったら、「そんなの流行らないでしょ」というのではなく、「ちょっとやってみるか」と受け入れてみる。逆に頑固だったり、否定的な意見ばかり言う人は、うちの会社は合わないです。
松下幸之助さんの、「物事をあるがままに見る」という言葉が僕は大好きで、これって素直さと同義だと思っているんです。実際、「物事をあるがままに見る」ことができる人間は活躍するんですよ。
いい人っていうのは、一緒に戦う仲間として、「自分と同じバスに乗ってほしい人なのか?」ということです。バスの座席の数は決まってるから、その座席に座ってほしい人なのかどうかというのは、かなり重要ですね。
北野 もしも目の前に、「素直さ」が足りない社員がいたら、曽山さんだったらどうします?
曽山 その人が本当にやりたいことを聞き出して、やってもらいます。「きみは何をしたいの? どうしたいの?」って聞いてアウトプットさせて、何かやりたいと言ったら、「いいよ、全部やって」と実際にやらせてみる。これがすごく大事ですね。その人がやりたいことを尊重することが大切です。
もちろん、「どういうことがしたいの?」って聞き出せる関係性があるのが前提ですが、それに答えてくれたら全面的に肯定してあげる。肯定=責任を果たせよということなので、その人に権限を渡していくんです。
「or」ではなく「and」で何でもやってもらう
北野 そのとき、もしも営業職の人が「デザインの仕事をしたい」と言ってもやらせてみるんですか? どう見てもデザイナーには向いてなさそうで、失敗する可能性が高くても……?
曽山 その場合のポイントは、「今の営業職をどうするのか?」ということです。営業の仕事をちゃんとやっておいてくれれば、何をやっていいよという話をすることが大事ですね。
よくあるのは、「デザインなんかやる時間があったら営業だけやれ」って否定をするパターンだと思います。orではなくandの発想で人を動かしたほうがいい。その方が、結果的に企業は活力を得ることができます。
私自身、人事になりたての頃藤田に、「社長、これやったほうがいいと思うんですけど」ってある課題を提言したら、「いいじゃん、やっておいてもらえるかな」と言われました。今やってることには触れずに、プラスアルファの仕事については基本、権限を渡す。これはうまいなと思いました。
北野 なるほど、そうすれば、既存の業務をやめろ、とは言ってないからですね。会社として失敗のリスクを負う覚悟があるのは、やはり社員を大事にしているからなんですか?
曽山 そうですね。僕らは、長期雇用、終身雇用の会社をつくることを目指していて「実力主義型終身雇用」を提唱しています。
実力がある人がずっと新しいことにチャレンジして、「どの会社に行くよりもサイバーエージェントがめっちゃ面白い」と思ってもらえることが、成長につながると思っています。今の会社にいながら、もっと頑張ろうと思ってもらえて、もっと楽しいと思える状況をつくるのが、人事として目指すべきゴールですね。