1911年10月、中国の武漢で政治的ウイルス感染が起きた。同国の鉄道を外国が支配していることに抗議する革命勢力が軍の駐屯地を急襲し、清(しん)国軍を容易に撃破、清王朝の弱体化を印象付けた。「武昌蜂起」として知られるこの政治的ウイルスは、急速に拡散した。3カ月後、この中国の革命は満州の支配者を倒し、中華民国誕生の前触れとなった。今日の武漢は新型コロナウイルス流行の中心地となっており、このウイルスが中華人民共和国に及ぼす影響は、まさに革命勢力と同様かもしれない。1911年に武漢でウイルス感染が起きるまで、清は400年にわたって中国を支配してきた。何十年にもわたって内戦に悩まされ、日本との戦争に敗れ、植民地主義にむしばまれてはいたものの、清は依然強大であり打倒されることはないと思われていた。しかし、何週間かのうちに、清朝の最後の皇帝となった溥儀は退位させられた。現在、新型コロナウイルスが中国政府を崩壊させると予想している者はだれもいない。しかし、ウイルスの拡散は、共産党の権力基盤の弱点を明らかにした。今回の事態は、中国の国際的イメージを根本から変えるかもしれない。
【寄稿】ウイルス禍で習氏に集まる世界の注目
中国の指導者は武漢の危機が自身の存在を脅かすものだと捉えている
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