コンビニ搾取の連鎖#5Photo:PIXTA

社会保険に加入していないコンビニ加盟店に対して、年金事務所による加入促進の圧力が強まっている。高騰する人件費に苦しみ、保険料を支払う余裕がないオーナーたちの店舗が大量閉店する日も近いかもしれない。同様のリスクは、他の小規模事業主にも付いて回る。特集『コンビニ搾取の連鎖』(全12回)の#5では、コンビニ加盟店の社会保険未納問題に迫る。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

社会保険料未納で年金事務所から通知
一括請求額は600万円!

「社会保険? 金がないのにそんなもん払えねえよ!」

 ある「コンビニ加盟店」のオーナーは叫んだ。年金事務所から調査のための訪問を受け、従業員の社会保険料の未納を指摘されたのだ。思わず追い返したが、悲劇はここから始まった。

 そのオーナーの元に後日、年金事務所からの「裁定」が届いた。これは国の決定であり、逃れることはできない。

 中に書かれていたのは、未納分の社会保険料と10%の延滞料、総額600万円を一括請求するとの通知だった――。

立入検査のイラストIllustration by Saekichi Kojima

 サラリーマンなら毎月保険料を支払っている健康保険と厚生年金保険。この二つを合わせて社会保険と呼ぶが、コンビニ加盟店の中には、オーナーや業務に携わるその親族はもとより、加入すべき社員やパート、アルバイトの社会保険料を支払っていないケースが少なくないという。

 主な原因は、(1)十分なお金がなくて払えない、(2)オーナーに労務管理の知識が乏しい――という2点である。

 コンビニ加盟店は、本部とフランチャイズ契約を結んだ、独立した事業主だ。例えば、「セブン-イレブン」という同じ看板で統一された高い商品やサービスを展開しているものの、個人経営の場合もあれば法人経営の場合もあり、経営形態はまちまち。従業員を何人雇い、誰をいつ、何時間働かせるか――。これは経営者の裁量に任されている。給料を幾ら支払うかもおのおののコンビニ加盟店の裁量で決める。

 また社会保険加入の適用条件は、同じコンビニ加盟店でも法人と個人事業主でやや異なる。法人の場合、オーナーと正社員、所定労働時間が正社員の4分の3以上の従業員については全員、加入義務がある。

 一方で個人事業主の場合は、事業所(店舗)単位で、上記の条件で働く従業員が5人以上いた場合に適用となる。

 保険料は労使折半だが、納付義務があるのは使用者側だ。社会保険料の未納が発覚した場合、既に辞めてしまった従業員の分も含め、使用者であるオーナーが全額納めることになる。時効は2年で、そこまでは遡及される場合があり、金額は膨らむ。