コンビニ搾取の連鎖#8Photo by Masaki Nakamura

仕入れの強制、無断発注、見切り販売の“妨害”……。コンビニエンスストア本部による加盟店への“横暴”は以前から存在した、いわば「古くて新しい問題」である。“市場の番人”と呼ばれる公正取引委員会に対して、加盟店オーナーの期待は高まっているものの、公取委は処分に及び腰だ。特集『コンビニ搾取の連鎖』(全12回)の#8では、独占禁止法の専門家の意見を基に、公取委が詳しく把握すべき事例を紹介する。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

楽天には直ちに立ち入り調査を行うも
コンビニ本部の不正は長年、把握しつつ放置

“市場の番人”は看板倒れに終わるのか──。

 独占禁止法を所管し、企業取引に目を光らせる公正取引委員会。インターネット大手の楽天が、マーケットプレイス「楽天市場」で一定額以上購入した買い手に対して送料を3月18日から無料とし、実質的に出店者に負担させようとしている問題で、公取委は出店者の声に即座に反応した。2月10日、同社に独禁法違反(優越的地位の濫用)の疑いで立ち入り検査を行ったのだ。

 これに先立つ1月29日、楽天の三木谷浩史会長兼社長は出店者向けのイベントで、「店舗の成長につながることは、たとえ政府や公取委と対峙しようとも必ず遂行する」と公取委を“挑発”。これが規制当局のプライドを刺激したのか、電光石火で楽天を抑えにかかった。

 しかし、公取委のこの迅速さはなぜかコンビニ加盟店問題では発揮されない。「コンビニエンスストアの一連の問題に関して、公取委は前から十分に把握していたが、有効な処分を下してこなかった」──。独禁法に詳しい弘前大学人文社会科学部の長谷河亜希子准教授はこう指摘する。

 公取委は1月17日から2月14日まで、インターネットを通じて加盟店向けに、本部との取引に関するアンケートを実施。収益やオーナーの勤務実態、ロイヤルティーや廃棄負担などについて事細かに尋ねる内容となっている。

 だが同様の調査は過去にも行われており、かつ最近注目されている本部側の不正は、実は以前にも指摘されていた問題だった。例えば、2019年にセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)で発覚した、本部社員によるおでんの無断発注。20年にはファミリーマートの店舗でも商品の無断発注が発覚した。

 ところが、すでに01年の公取委の調査で、「仕入れ数量について、加盟店オーナーの了承を得ずに、経営指導員が店舗内にあるストアコンピューターで発注していくことがある」との加盟店の回答があったのだ。

 さらに11年の公取委の調査でも、「返品をすることができないのに、本部が設定している目標数量を達成するため、経営指導員から商品の仕入れ数量が強制された。また、オーナー不在時に勝手に経営指導員に商品を発注され仕入れさせられたこともある」と回答されていた。

 本部社員による無断発注は長年にわたって存在し、“被害”に遭った加盟店オーナーも数多い。ようやく最近になって注目を集めた、いわば“古くて新しい問題”だ。

 公取委はオーナーの訴えを以前から把握し、その内容を公表していたにもかかわらず、実態を放置したまま是正してこなかったのだ。もちろん本部による加盟店への不正は、無断発注にとどまらない。本部の公式見解と実態との差を、専門家の意見を交えながら検証しよう。