中国人民銀行が2月3日に公開市場操作で金融市場に1兆2000億元の流動性供給を行うなど、積極的な政策対応も実施されているが、それでも中国景気の大幅な減速は避けられない状況だ。

 SARSの時も、今回と似た形で中国を中心に感染が拡大、世界保健機関(WHO)によれば2002年11月から2003年8月7日の間で感染者数は8422人、死者数は916人にまで達した。

「2ケタ成長」を続けていた中国の実質GDP成長率は03年4~6月期の前年同期比+9.1%と、1~3月期の同+11.1%から急減速した。

 また感染者が広がった香港では成長率が前年同期比▲0.6%、さらに台湾は同▲1.2%、シンガポールは同▲0.3%と、一時的ながらもマイナス成長となり、広く周辺地域の経済に悪影響が及んだ。

 新型コロナウイルスの場合、2月6日時点で中国本土での感染者が99%(WHOベース)だ。しかし、SARS発生から17年がたち、アジア経済全体がさまざまな面で中国経済に対する依存度を大きく高めている。

 新型コロナウイルスは、SARSとの対比で見てもアジア経済に対し大きな悪影響をもたらすことは避けられそうにない。

香港、タイの観光業、収入激減
1-3月期はマイナス成長の懸念

 まず考えられるのは、中国人海外旅行者の激減の影響だ。

 中国の成長にともなって 観光業はアジア各国・地域で大きく成長した。2018年の中国人旅行者の支出額(中国からの旅行サービス受取)は、香港でGDP比8.0%(2003年:同2.4%)にもなり、タイでも同3.3%(2003年:同0.3%)と大幅に拡大している。(図表1)。

 日本の場合も、中国人旅行者の支出額は対GDP比0.2%と、他のアジア諸国・地域と比較して小さいが、2003年の同0.0%から拡大しているうえ、潜在成長率が1%程度の日本経済には無視できない数字だ。