武漢は1100万の人口を擁し、中国中央に位置して北京・上海などを結ぶ交通の要衝であり、感染がわかってから1月20日に武漢市「封鎖」の決定が行われるまでに、なんと500万人以上の人々が武漢から中国全国や全世界に出て行った。

 共産党体制下にあって地方は中央の指示があるまで動けず、専門家の知見は政治的混乱を生むとして封殺された。習近平総書記への権力の集中の結果、この間、総書記に感染の情報を上げることすら躊躇されたのではないか。対応の遅れを各方面から指摘されるのは当然だろう。

中国の“将来”に懸念強まる
一党独裁と経済自由化の矛盾

 感染拡大の問題で改めて露呈した共産党統治体制の欠陥は、中国の将来についてネガティブな見方や不透明感を強めることになるのではないか。

 中国のこれまでの発展があまりに急速だった故に、そのひずみが多々出てきていると見るべきかもしれない。

 急速な経済成長を実現したにもかかわらず、国民生活の質的な充実が全く追いついていない。基礎的インフラや医療、環境、食の安全を含む国民生活の基盤が貧弱であるにもかかわらず、「一帯一路」に示される対外的な拡張に走っており、このことについて国内の不満が蓄積している、と考えられても不思議ではない。

 今後、感染症の予防体制だけではなく、食品安全に関する体制を強化していく必要はあるだろう。

 そもそもこうした緊急事態になった時の行動指針などを透明化し、共産党の隠ぺい体質を改めていかない限り、今後の中国の経済成長は容易ではない。

 進出企業や中国経済との関係を深めている外国企業は、今回の経験を踏まえ、今後、中国での操業やサプライチェーン・マネジメントをさらに厳密に考えていかざるを得ないからだ。

 中国の将来を巡る懸念はこれにとどまらない。米中貿易協議のプロセスで明確となってきた政府が前面に立っての先端産業育成や、軍との結びつきが疑われるファーウェイに代表される中国のハイテク企業が、「5G(第5世代)」ネットワークの中枢技術を握ることによる国家安全保障上の問題など、「国家資本主義」への懸念は今後、大きな課題となっていくだろう。

 そして香港を巡る中国政府の強硬姿勢は、「一国二制度」を形骸化させ、結局は、中国本土との一体化を進めていくのではないかという疑念を生んでいる。

 他方、台湾は再選された蔡英文総統の下で、中国から離れていこうとするのだろうが、これに対して中国がどう対応するかで、国際社会は新たな不安定要因を抱える可能性がある。

 これらの懸念は全て同根なのかもしれない。共産党一党独裁体制と経済自由化の矛盾が、ここに来て一挙に表面化したと考えるべきではないか。