老夫婦相談介護の職員が高齢の親から頼まれるのは、自分のことよりも引きこもる子の支援だったりする(写真はイメ―ジです)Photo:PIXTA

高齢者の支援センターを
福祉拠点にする発想の転換

 8050(はちまる・ごーまる)問題では、引きこもり当事者に対して支援の手が行き届かない実態が顕著になっている。そんな中、ある自治体の高齢者介護の部署が交付金を使い「引きこもり」などの多世代の支援を行おうという「制度のヨコ串改革」が、全国に先駆けた取り組みとして注目されている。
 
 介護保険上の65歳以上の高齢者が利用できる「地域包括支援センター」を「福祉拠点」にする方針を打ち出したのは、北海道函館市だ。2年後の2022年4月から、市内の地域包括支援センター10カ所の機能を拡充し、従来の65歳以上の高齢者だけでなく、多世代でも相談支援できる体制にする。その準備のために、20年度から担当課長のポストを設ける。

 背景にあるのは、函館市に限らず、地域包括支援センター職員が家庭の中に入ったとき、高齢の親から「私のことよりも、引きこもる子の支援をしてほしい」などと望まれることが多いことだ。介護保険法という法的根拠の壁で、介護職員がサポートできなかったり、そもそもどう声をかけたらいいのか、あるいはどこの部署につなげればいいのかさえわからなかったりして、従来の縦割りの枠組みでは対応できないまま介護を終了してしまうなど、介護保険上の同センターの立ち位置が課題になっていた。

 千葉県松戸市のように、高齢者支援課に「福祉丸ごと相談窓口」を設け、専従職員が包括的な支援をしている先行事例はあるものの、介護保険法の特別会計と、障害者や子ども支援の一般会計をそれぞれ活用しており、地域包括支援センターが丸ごと受けているわけではない。

 厚労省によると、「地域共生社会」に向けた地域づくりと、市町村の包括的な支援体制の整備を目指し、通常国会に「社会福祉法の改正」が提出され、2021年4月に施行される予定だ。

 この新制度は、従来の部署間の縦割りを排除し、特に財政面において制度横断的な勝手が良い交付金を創設。市町村が任意で手を挙げることにより、交付金を活用して実施できるのが特徴という。