だが、合弁会社で稼いだキャッシュが将来の中国ビジネスの研究開発コストや設備投資へそのまま投じられるわけであり、大手自動車メーカーにとって中国事業の成否は死活問題だ。販売台数減が日系自動車メーカーに与える打撃は大きい。

 そして中国を発生源とした新型肺炎は日本も含めた世界各国へ感染が拡大しており、現時点で終息の兆しは見えていない。

 中国生産の抑制やサプライチェーン(部品供給網)の寸断、中国の消費減退といった負の影響がより深刻化し、日本経済へも深い影を落とし始めている。

 すでに中国製部品が滞ることで日産の国内生産が休止されるなど、サプライチェーンの寸断が明らかになっている。

 前出の自動車アナリストは、「あまり問題視されていないが、仮に国内生産拠点で肺炎感染者が発生したならば、生産停止に追い込まれるリスクがある」と言う。

 日本政府が大規模イベントの中止やリモートワークを推奨しているさなかに、工場要員が多数出勤する生産現場の感染リスクは高いのではないかという指摘だ。

 また、中国共産党が講じた「移動制限」施策ほどの強制力があるわけではないが、日本で広まりつつある自粛ムードは、自動車のような高額消費の減退につながることは確実だろう。

 すでに減少に転じた中国や米国市場に続いて、「日本市場も減少へ向かう」(同)観測が浮上している(図参照)。

中国ビジネスの再定義

 ここにきてある自動車メーカー幹部は「さらに一段厳しいシナリオを想定している」と打ち明ける。

 それは、「中国がけん引することで成長した“世界販売9000万台市場”を回復することは、もはや難しいのではないか。世界のBtoC(個人向け)ビジネスは成熟ステージに入った」(同)というものだ。