現在、モビリティ領域にはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化の四つの技術トレンド)の大波が押し寄せている。自動車業界が直面しているのは、従来の車の価値が根底から覆るような「100年に1度の激変期」なのだ。

 新たな競争軸は、品質の良い車をできるだけ安く大量に造ることにあるわけではない。9000万台の世界市場のうち、シェアをできるだけ多く確保したプレーヤーが勝者となるわけでもない。日独米のような伝統的な大手自動車メーカーは、ゲームチェンジを迫られている。

 そして、中国政府は自国の自動車市場の大失速を取り返すために、なりふり構わぬ消費刺激策を打ってくるだろう。

2018年に中国の李克強首相が来日。トヨタ自動車は中国政府と“和解”し、中国進出を急加速させてきた Photo:The Asahi Shimbun/gettyimages2018年に中国の李克強首相が来日。トヨタ自動車は中国政府と“和解”し、中国進出を急加速させてきた Photo:The Asahi Shimbun/gettyimages

 ある自動車メーカーエンジニアは、「ガソリン車以上に伸びが厳しくなっていた電動車市場をてこ入れするような政策を打ち出すかもしれない」と予測する。

 日本の自動車産業は、難局にあっても中国への投資を積み増すのか。それともそれを控えるのか。中国市場とどう向き合うかの分水嶺に立っている。

 18年に中国の李克強首相が来日した頃、トヨタは1980年代の中国進出の出遅れを理由にギクシャクしていた中国政府と“和解”し、その後は陣容を拡充して中国戦略を急加速させてきた。

 今回のような中国の“国難”は大きな政策の変わり目となる。やり方によっては、日系自動車産業が中国ビジネスを再定義するチャンスとなるかもしれない。