「国家」から目をそらすと、「資本主義」を正しく理解することができない。中野剛志氏はそう指摘する。ヨーロッパ各国が戦争を繰り返すなかで、試行錯誤をするうちに、知らず知らずのうちに、貨幣制度も中央銀行も資本主義も、そして国家すらも生み出されてきたからだ。この冷徹な現実を見据えることによってこそ、残酷な世界で「普通の国民」が生きていくための「国家戦略」が見えてくるという。(構成:ダイヤモンド社 田中泰)

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「現実」を説明できない経済学は、国家政策の立案に使えない

――前回、中野さんは、MMTは現実に立脚した経済理論であり、地政学や政治学など他の学問との接

『富国と強兵 地政経済学序説』中野剛志 東洋経済新報社

続が可能だとおっしゃいました。

中野 はい。だから、『富国と強兵 地政経済学序説』のイントロダクションとしてMMTをもってきたんです。

――なぜ、MMTをイントロに?

中野 MMTが、経済と国家、経済と政治が密接不可分であることを理論的に示しているからです。

――どういうことか、詳しく教えてください。

中野 主流派経済学は国家や政治が市場に介入することで、効率的な資源分配が歪むといった主張をしますが、現実には、自由放任主義で経済は均衡していません。むしろ、国家が適切に介入することで、資本主義は安定化することが観察されています。

 また、ここ何十年も、グローバリゼーションによって国家が後退すると言われてきましたが、実際には国家が残り続け、むしろ、いまは世界が多極化したことで国家のプレゼンスが日増しに強まっています。しかも、リーマン・ショックという経済現象によって、世界経済が停滞・縮小したことで、国家間の地政学的な緊張を高めているわけです。

 こうした現象は、ここ数十年にわたって世界で喧伝されてきた主流派経済学の理論では説明できません。私は国家官僚ですが、そのような経済理論は、実際に政策立案をするうえで、使い物にならないんです。だから、私は経済ナショナリズムを研究テーマに据えて、そもそも経済と国家、経済と政治学・地政学が密接不可分であることを証明しようと研究をしてきました。

 そのなかで出会ったのがMMTでした。前に説明したとおり、MMTは、貨幣の価値を下支えするのは国家の徴税権という「政治権力」であることを理論的に説明するものです。経済にとって貨幣は不可欠なので、その貨幣が国家と切り離せないことを証明できれば、経済と国家、経済と政治が切り離せないことを理論的に記述できると考えたんです。

――なるほど。

中野 そのうえで、なぜ経済と国家や政治が密接不可分になったのか、その経緯を歴史的に検証した結果、非常に興味深い事実が見えてきました。

――何ですか?