星野リゾートの経営を深掘りする「星野リゾート 異端の経営」特集の第5回は、星野佳路代表へのインタビューをお届けする。独自の組織力を武器に急速な規模拡大を目指す同社の今後の方向性と課題について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 相馬留美)
世界では「星野リゾート=日本のホテル」
海外の課題はブランドイメージ
――近年、急激に施設数を増やしています。
フラットな組織文化というものが利いていて、私があまり関与しなくても日本国内のことはうまく回っています。ですから、今は海外をもっとスピードアップして増やしていくことが大事だと思っています。
国内観光市場のうち、8割を占める日本人が高齢化しており、2025年には団塊の世代が後期高齢者になっていく。こういう状況下で、星野リゾートはグローバルに通用する運営会社になるという選択をしているんです。ですから、国際ホテルチェーンと全く違う運営方法を身に付けてきたつもりなので、そのノウハウを生かして、早く海外で実力を発揮できるようにしたい。
――海外でも星野リゾートの運営方法が通用すると考えていますか。
星のやバリを見ていただければわかるように、満足度も非常に高いですし、スタッフもフラットな組織になじんでいます。台湾のスタッフも研修で日本に呼びましたが、運営自体には不安を感じていません。
課題は、ブランドイメージにあると思っています。まだまだ世界の中では「星野リゾート=日本のホテルの会社」。日本で旅館に泊まるなら星野リゾートを選ぶとしても、バリに行ったときでも星野リゾートに泊まりたい、というところまでまだ行き着いていない。バリでは、フォーシーズンズやリッツカールトンと比較される。国内ほど、集客で優位に立てていません。
――海外は積極的に出ると。アジア中心の出店をお考えですか?
それは全然考えていないですね。旅行人口がしっかりいる、大きな都市に出ることが大事だと思っています。北米進出ももちろん考えています。
――国内では、地方再生も御社の大きなテーマだと思います。「星野リゾートがわが町に来る」といったときの抵抗を感じることはありますか。
むしろ、単価の低いホテルが入ってくると、「客が奪われるんじゃないか」と戦々恐々になるわけです。星野リゾートは、高価格帯で入ってきますから、そんなに地元の方は緊張なさらない。顧客層が重ならないので。
ですので、その地域に来ていないような顧客層を地域に呼び込もうというのが、私たちの基本的な路線です。
――「星野リゾートが来たらうれしい」という反応もあるのですか。
そういうところも出てきています。来年オープンする山口県の長門湯本温泉では、巨大な旅館が破綻し、長門市のほうからお話をいただいたのがきっかけなのですが、温泉街全体の再開発、マスタープランをわれわれが設計して手掛けたんです。他の旅館さんや長門市と一緒になって、道路や歩道はどうするだとか、旅館のデザインはどんなデザインで統一しようとか、温泉街を歩かせる工夫はどうしようとか。社会実験までやって、今出来上がってきています。
競合と考えられていた旅館さんと一緒になって、温泉街全体の集客を伸ばしていこうと話しています。