障害のある人の感情の表現が「自傷(自分の体を傷つける)、他害(他の人に暴力をふるうなど)」となって現れること(「強度行動障害」と呼ばれる)もある。現場の苦労も取材で見聞きしている。だが、その場合でも職員や支援者の対応方法によって、障害者の行動が変わっていくことは実証されている。

インターネット放送局で番組制作
メンバーが元気になっていく

 前述のピープルファーストジャパン会長の中山千秋さんも、20代のころ、入所型施設で暮らしていた。施設では厳しい規則から少しずれたら、すぐ職員がみんなの前で殴ってきたり、足で蹴られたりしたという。「とても悲しくて、つらかった」と振り返る。

「障害があることで、つらい人生だった」と語る2人が周囲から祝福された日
「障害があることで、つらい人生だった」と語った野村信久さんと中山千秋さん。2人が周囲から祝福された日 写真提供:創思苑

 いまは、東大阪市のグループホーム「つばさ」に住み、作業所の「クリエイティブハウス パンジー」で働いている。中山さんは弁当のおかずの盛り付けや弁当箱を回収したり洗ったりしている。

 40歳のとき、パンジーで知り合った野村信久さん(57歳)と結婚し(写真参照)、2人で暮らす。野村さんも精神科病院での入院時、身体拘束を受け手足を縛られた。いまは、無添加のパン製造をしている。

 このような知的障害のある人の暮らしぶりは、社会福祉法人創思苑が運営するインターネット放送局パンジーメディアの番組「きぼうのつばさ」でも紹介されている。知的障害のある人らがプロデューサー、カメラマン、キャスター、コメンテーターなどを務めながら、毎月50分の番組を作っている。2016年にスタートし、今年2月で42本目となった。すべての番組はホームページで紹介されている。

 NHKテレビのドキュメンタリー番組を制作していた小川道幸さんがエグゼクティブプロデューサーとして支援するため、誰でも理解しやすいように、編集上で文字や音等を工夫している。毎回、3~4本の企画コーナーが並ぶ。

人気コーナー「私の歴史」で
当事者が語るストーリーとは?

 人気コーナーは「私の歴史」で、当事者が自分の半生を10分程度で語る。子どものときからどのように育ってきたか、学生時代の思い出はどんなことだったか、どんなことをしてみたかったか、いまの生活の様子などを話す。その中で、ほとんどの人がいじめられたり差別を受けたりして、つらくて、悲しくて、悔しかったエピソードを告白している。

「最初の打ち合わせでは、みんな、うつむきがちに自分の思い出を話します。番組の試写を見ている時も下を向いたまま…。でも、それを見終わったとき、メンバーから『がんばって話したね』と拍手をもらったことで、生活の別の場面でも積極的になっていきました」と小川さんは話す。