新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で、訪日外国人客が激減、さらにホテルの宴会需要なども大きく減り、魚介類などの高級食材が売れない状況が続いている。豊洲市場関係者は口々に「東日本大震災やリーマンショックの時よりもひどい」と断言。仲卸からは資金繰りに関する不安の声も出ている。(ダイヤモンド編集部 津本朋子)

価格を下支えしていた
輸出需要も激減

ウニやマグロなど、高級食材の相場がぐっと下がっています。インバウンドや宴会需要などに加えて輸出も激減。豊洲市場では高級魚が行き場をなくしている Photo:PIXTA

「東南アジア向けはダメ。米国向けはどうなるのか…」。豊洲市場の水産卸関係者が肩を落とす。日本の水産物や農産物は日本食ブームも相まって海外では人気。「外国人が買ってくれていたから、相場が高く維持された」側面もあったが、新型コロナ流行で、その輸出需要が激減している。

 理由の一つは新型コロナが蔓延している国での外食需要の減少。中国や香港をはじめ、例えばウニが少ない時期に「いくらでも出すから売ってくれ」と頼んできたようなすし店など、和食店からの注文がぱったり途絶えた。

 そしてデマも影響している。例えば2月27日、在日タイ大使館がSNSで、ウイルス感染を防ぐために「生魚などを食べないように」呼びかけたことがきっかけで、タイ国内では「日本の刺し身を食べると新型コロナに感染する」といったデマにまで発展。バンコク市内などに多数ある和食店にはお客が来なくなってしまった。

 今後、卸関係者が気をもむのが米国の行方。米国にも日本の魚介類はたくさん輸出されているのだ。「米国は厳しいから…」、そんな不安の声が聞かれた。

 国内のインバウンド需要や、日本人の宴会需要なども激減。都内の訪日外国人客に好まれていた天ぷら店には、外国人客からは「日本人と同じカウンターに座りたくない」、日本人客からは「中国人などコロナ感染国のお客と隣同士になりたくない」と電話での問い合わせがくる。こうした疑心暗鬼が外食需要をますます悪化させていく。