初動が遅れ、武漢市の「封鎖」が行われるまでに500万人といわれる人々が交通の要衝である武漢から各地へ散っていった。

 一方でその後の感染拡大を止めたのは、共産党体制の強制力と先進的なITを駆使した手法、監視社会の下でのビッグデータの活用だった。

 要するに習近平体制で着々と積み上げられてきた監視体制が功を奏したということだ。

 中国にとっては、今後、2つの課題を克服することができるか否かが、大きな分岐点になる。まず1つ目は「経済成長」の維持だ。

 中国共産党にとってみれば統治の正統性を示す上で高い経済成長の維持は必須だ。特に2020年は習近平総書記が掲げる所得倍増公約(2010年比)の最終年になることから、実現に必要な5.6%以上の成長率達成に躍起になるに違いない。

 すでに内政の重点は経済活動の早期回復に移っており、地方・中小企業への財政支援や投資・減税などあらゆる政策手段が活用されるだろう。

 コロナウイルス感染拡大防止のために武漢市などで実施された、例えば食料品などの無人配送サービスや医療などのオンライン事業を他の地域に本格導入する動きもある。

 一時的に成長が大幅に減速した場合に、特に若年失業者の増加も相まって国民の不満は蓄積されるだろうが、感染症対策で国民に対する監視体制は一層強化されており、習近平体制そのものが揺らぐことはないだろう。

 共産党一党独裁体制は初動で失敗したが、感染症拡大の終息には適しているということか。

 2つ目の課題は国際的な「イメージの回復」だ。

 中国での初動の誤りが世界的感染拡大を生み、衛生状態や医療インフラの後進性を世界にさらし、中国の国際社会でのイメージを大きく損なった。

 欧米では中国人だけではなく韓国人、日本人への差別意識も見られる始末だ。

 習近平政権は、感染拡大が山を越えて終息に向かっているなど、国際社会への積極的なメッセージを出し、反転攻勢にでようとしている。

 中国の感染が湖北省も含め終息しても、米国や欧州の感染はおそらくまだ拡大の一途をたどることになるかもしれず、中国での感染終息と欧米での感染拡大の長期化というタイムラグを、中国は、共産党統治体制の優れた点だということでイメージ回復に積極的に活用しようとするだろう。

 強権体制で感染を止めた中国と、個人の自由を制約しきれない欧米先進国との対立は激化する。