さらに日本ではアメリカと違い、作家・マンガ家・映画監督などのクリエイターは、作品の2次流通に、最後まで原作権として関与する余地がある。個人としてのクリエイターの身分が確立され尊重される文化が、現在のアニメ・マンガ・ゲームの作品性につながっている。

 日本のクリエイターや日本的組織から生み出されたマンガ・アニメ・ゲームなどの「オタク」プロダクトは、文化商品となってグローバルでニッチな市場を切り開いた。それは欧米の後追いではなく、想像力から生まれた日本のオリジナル商品であった。それがいまやグローバルでマスなコンテンツへと市場を広げている。その成功法則はジャパン・アズ・ナンバーワンの1980年代を支えた「経験曲線によるコストリーダーシップ戦略」で、欧米の創造過程とは対極にある。

 日本の創作作業は前述したように前近代的で、戦略性とは程遠い。現場の柔軟な創造力を優位性とし、個人や中小企業を単位とした産業クラスターが、ネットワークを形成することで維持されている。こうした日本のコンテンツ産業の特異性には、私たちも自覚的になる必要がある。

◇文化産業を使った消費刺激のビジネスモデル

「かっこいいと思う基準」は日本オリジナルのものであっても、長い時間をかけて「文化消費インフラ」が築かれれば、それは他国でも十分受け入れられるものになる。現在は国籍を問わない「オタク」が市場を広げている。

 今後いっそう求められるのは双方向のコンテンツ作りだ。アメリカがディズニーのような巨大な組織をつくってきたのとは対称的に、日本では複数のコミュニティが共利共生し、古い企業の資産を最大限に生かしている。このような取り組みが、日本企業の生き残る道となるだろう。そのうえでハードウェア産業もこうしたソフトウェア産業と手を組み、異文化に「仕掛ける」ことが大切になる。

 日本の文化産業が持つ物語の伝播力は、すでにジャパン・アズ・ナンバーワンの時代を超えている。マンガ・アニメ・ゲームはもはやコンテンツとしてだけでなく、日本の文化浸透のための新しいメディアとして機能している。それはマスメディアではなく、個々のユーザーとのチャネルになるコミュニケーションメディアだ。

 キャラクターが映像・ゲームなどの情報消費で終わっているうちは、まだその力を活かしきれていない。それが玩具やコレクションアイテムのような物販消費になり、さらに機能型商品にライセンスされ付加価値を与えるものになって、はじめてグローバルに浸透していくのである。今後はこうしたオタクカルチャーによって築かれたライブコンテンツメーカーというビジネスモデルを武器に、ふたたび他産業が日本文化を切り口にして、グローバル市場に進出する時代がくるだろう。