「ダイバーシティ経営」というと、一部のマイノリティの人たちをどう扱うかといったイメージがあるかもしれない。しかし、一部の限られた対象に対しての施策などではなく、実はどんな組織にも必要とされているものだ。「ダイバーシティ=多様性を生かす組織づくり」とは、個が生きる組織マネジメントとはどういうものなのか。僕が開成中学校で受けた「ダイバーシティの洗礼」とでもいうべき経験も振り返りつつ、考えたい。(freee株式会社CEO 佐々木大輔)
開成中学校で受けた
ダイバーシティの洗礼
「もはやダイバーシティは当たり前」と、今僕が当然のように思えるのは、実家が美容院で、色々なお客さんとの交流が日常的に起こる環境で育ったことも関係しているかもしれない。でも、ダイバーシティの英才教育を受けたような感覚を味わったのは、開成中学校に入ってからだ。
開成はいわゆる有名進学校で、「ガリ勉」とか「オタク」を連想させる人たちもたくさんいた。少し気弱で、おとなしく、学園ドラマなどに登場するとしたら目立つグループにからかわれたりしそうな、そんな感覚を抱かせるような人たちだ。
ところが、開成の学生生活の中で僕が彼らに感じたのは、「こいつ、すげえものを持っているな」「こういうことに、これだけオタクになれるのはすごい」ということばかりだった。「変わっている」とか「ダサい」ではなく、思わず「すげえ!」と感激する場面や環境が、開成中学校には当たり前のようにあった。
たとえば、他の中学校ではマイノリティになりがちな鉄道研究会というサークルは、開成中学の中では当時一番の勢力を誇っていた。修学旅行の計画時に、飛行機と電車とどちらで行くかということで投票になったとき、研究会の組織票で必ず電車が勝った。飛行機で北海道に行ったほうが早いし楽なのに、電車が勝ってしまうのだ。一見地味な印象を受ける「鉄道研究会」だが、開成中学では鉄道オタクの彼らは勢力がとても強く、校内でリスペクトされたり、一目置かれたりしていた。