新型コロナウイルスの急速な感染拡大が、米国を襲っている。政治の分断が危機下での団結を難しくするなど、「米国第一主義」の負の側面が目立ちやすい状況だ。こうしたなかでトランプ政権は、1兆ドルを超える対策の実現を急ぐ。再選を目指すトランプ大統領の政策運営は、思わぬ形で正念場を迎えている。(みずほ総合研究所欧米調査部長 安井明彦)
新型コロナの急速な感染拡大
トランプが焦る「岩盤層」の変化
3月17日にトランプ政権は、総額1兆ドルを超える対策の実現を急ぐ考えを示した。主軸となるのは、各家庭への現金の給付である。当初トランプ政権は、公的年金などの財源である給与税の一時減税を主張していたが、超党派の支持が得られやすい現金給付に乗り換えた。
遅きに失した感は否めないが、政治的な対立を回避し、なりふり構わず結果を目指す姿勢が強まっている。何かにつけて分断を煽ってきたこれまでのスタイルからは、180度の方向転換である。
トランプ政権が対策の実現を急ぐのは、急速な感染拡大はもちろんのこと、政治的にも危うい状況になってきたからである。再選戦略の要である岩盤支持層に、感染拡大への懸念が広がりつつあるようなのだ。
米ワシントン・ポスト紙の集計によれば、グーグルで「コロナウイルス」というワードを検索する割合が、2016年の大統領選挙でトランプ大統領が勝った州で上昇し、3月第1週の時点で民主党のクリントン候補が勝った州と同程度になった。