米大統領選挙、党派対立に影落とす
女性の生き方や子育ての異なる価値観
米国の大統領選挙は、11月5日の投開票日を前に9月20日にはバージニア州などで期日前投票の受け付けが始まった。
米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスの集計によれば、9月中旬時点の支持率で民主党候補のハリス副大統領が共和党候補のトランプ前大統領を2%ポイントほどリードしている。支持率の差はいぜんとして小さいが、トランプ氏が勢いを取り戻すきっかけをつかみかねているのは間違いない。
トランプ陣営がハリス氏の弱点とされてきた経済問題などの政策論で攻勢をかけられていないなど、選挙戦略は焦点が定まっていないこともあるが、、それよりもTV討論会でのトランプ氏の「オハイオ州で不法移民が犬や猫などのペットを食べている」発言のように、根拠のない主張で墓穴を掘っている感じが否めない。
副大統領候補としてトランプ氏を支えるはずのJ・D・バンス上院議員もトランプ発言を擁護して批判の火に油を注いだだけでなく、過去にハリス氏らを「子どものいない猫好き女性」と呼ぶなど、子どもを持たない女性を蔑視するような発言をしていたことが掘り返され、物議を醸している。
だが、こうした発言が単なる思い付きからきた「失言」とは言い切れない点には注意が必要だ。背景には、人口減少社会の到来が米国でも現実味を帯び始める中で、女性の生き方や子育てを巡る価値観などの違いが、移民規制や人種問題、妊娠中絶問題にも結び付いて「分断」を広げてしまうという深刻な問題がある。