なぜ冬にアイスのCM?

 「60円のアイスキャンディの販売戦略およびマーケティング戦略を考えてください」

 ビジネススクールのみならず今や企業での研修でもこの手のケーススタディやシミュレーションを取り入れることも多いようだが、このような課題を出されたとしたら、皆さんはどういう答えを捻出するだろうか?

 正月、妻子を実家に返し、東京に1人残って修士論文に四苦八苦していたとき、少し休憩と思ってつけたテレビでアイスキャンディの「ガリガリ君」のテレビCMが登場した。15秒の短いCMであったが、正月っぽいあっぱれな雰囲気のCMは非常にインパクトがある。

お正月だからこその
ピンポイントCM出稿

 そう、ガリガリ君こそ、1本60円のアイスキャンディである。しかし、日本各地に大雪を降らせた日に、アイスキャンディのCMを流して果たしてどれほどの効果があるのか。お正月はテレビをつけっぱなしの家庭も多く、CM出稿料もそれなりにするであろう。そんな予算があるなら、もう少し気温が上がってきた時期に宣伝したほうが収益性を考えるなら効果的ではないのだろうか。

 しかし、よく考えてみると、お正月という家族が集ってテレビを見る時だからこそ、ガリガリ君にとってはテレビCMが効果を生むのかもしれない。

 大人にとっては懐かしのガリガリ君は、子供にとっては現役で大好きなアイスキャンディ。年末年始は家族総出でスーパーに出かける人も多いが、CMを見た大人が「よし子供に買ってやるか。ハーゲンダッツと違って安いしね」と1箱購入していくかもしれない。家族そろってCMを見る、その直後に家族全員でスーパーに行く、大人にとっては懐かしい、そして子供にとっては今うれしい商品、そういう状況と商品特性を考慮するとガリガリ君のCMをお正月に打つことは理に叶っている。

地道なマーケティングこそ
最もコストパフォーマンスが良い

 ガリガリ君を作っているのは赤城乳業という埼玉県深谷市に本社がある企業であるが、上場をしていないため、深谷市以外の一般人がその会社名を聞くことはあまりない。しかし、この会社、そのマーケティング戦略に関してはビジネススクールなどのケーススタディとするべきと思うぐらいに優れている。

 実は3年前になるが、同社から招待され深谷市の本社を訪問したことがある。それまで同社に何の縁のゆかりもない私に声がかかったのは、ブログでガリガリ君のことを書いたからであった。