従来型の人事制度が
専門人材の育成を阻害する

 経営人材の育成という観点でもアジャイルへの変革は不可欠だが、その障壁になるのが従来型の人事の仕組みである。従来の企業は、ジョブローテーション等を通じて全ての重要部門を経験させ、一人が全てを知っている「究極のジェネラリスト」を育てることが可能だったし、その過程でいわゆる「出世コース」というものもできた。しかし、昨今デジタルやAIなど技術の急速な進化や、それらを活用したビジネスモデル、オペレーションモデルの再構築が急務となる中、一人が全てを知ることは事実上不可能だ。あるいは、育成に時間がかかりすぎる。よって「一人が全部」ではなく、「全員で全部」、いわゆるコラボラティブな働き方が必要不可欠となる。

 BCG Digital Ventures (以下BCGDV)にはビジネスをよく知る人材のほか、エンジニアやデザイナーなども多く在籍する。クライアントである大企業でプロジェクトを担当する方々は、BCGDVに常駐の形で参画し、多様な専門性を持った小単位の集団として、各専門職種の人材とスクラムを組んでことに当たっている。

 しかし、こうした経験を経て、新しい働き方やデジタルリテラシーを身に着けた大企業の若手の方々が、案件の最中であっても突如として人事異動を告げられ、時に全く関係ない部署の所属になってしまうという事例があまりに多く、非常にもったいないことだといつも痛感している。この人事異動という聖域の仕組みを抜本的に変えない限りは根本的な変革は望めないのではないか。

 人事という聖域を変えていくために、また専門職種の人材を急速に厚くするためには、中途入社の社員をもっともっと積極的に採用する必要がある。私の感覚で言えば、既存社員に対して中途を同等から倍程度は採用しないと追いつかないのではないだろうか。

 既存社員の中でも、若手は柔軟性が高く吸収も速いことが多い。昨今、子会社社長など責任ある立場に30代の若手を登用する事例が増えてきているが、とても良い流れだと思う。若手にどんどん権限移譲していくことが重要だ。

 若手が中心を担う企業に変わる過程では、彼らの働き方や価値観、組織への帰属意識などへの配慮も欠かせない。オフィスレイアウトや服装規定もさることながら、在宅勤務、副業や兼業なども時代に合わせて取り入れていく必要がある。