なぜ、借金はダメなのか?
私は育った環境から多くのことを学びました。私が持つ文化的背景の中でも、特に重宝した特質があります。統計によると、中国人の平均貯蓄率は38パーセントだというのです。
米国人の3.9パーセントや日本人の2.8パーセントと比べると、とてつもない数字です。どうしてそうなっているのでしょうか?
単に、中国の文化がもともと、ほかの文化よりも倹約志向なのでしょうか?
私は最も頼りになる資料に当たってみました。父です。父によると、共産党が国を支配する以前にも、政府には腐敗がはびこっており、倹約は単なる生きるための手段だったようです。
誰かがあなたに貸しをつくったとき、あなたはそれを返さなければなりませんが、それは政治的な見返りか金銭的な見返りでなされます。
誰かに借りをつくることは、誰かにあなたを支配する力を与えることだということが、徐々に国民の心理の中にしっかりと植えつけられていくのです(中国では旧正月の間に借金をすべて返済し、まっさらな状態で1年を始めなければなりません。さもなければ1年中、不幸に見舞われると言われています)。
これはあくまで事例証拠にすぎませんが、ほかの説明もあります。第一に、中国ではほとんどの歴史において、国民は借金できなかったのです。
1985年までクレジットカードすら導入されていませんでした。クレジットカードが1950年に導入された欧米社会と比べてみてください。私が子どものころ、クレジット(信用貸し)という概念には全くなじみがありませんでした。
クレジットカードが何かを知らず、銀行ローンは聞いたことがなく、住宅ローンの仕組みなど知る由もなかったのです。
両親は自転車や腕時計など高額の商品を買いたいとき、お金を貯めました。クレジットで買って、後で返済するというのは選択肢にありません。買うお金があるか、買わずに済ますかのどちらかでした。
二番目に、中国では社会のセーフティネットが整備されていないことから、常に自分自身で身を守らなければなりませんでした。
教育、医療、老後?
すべて、自分で工面しなければならないのです。
最後に、いつか必ず大惨事が起こるという人生観が両親の世代には刷り込まれています。
そうしたマインドセット(いつろくでもないことが起こるかわからない)が彼らの世の中の見方を形成していました。政府に頼るという発想自体が嘲笑ものです。政府の仕事はあなたを助けることではないのです!
彼らの仕事は、あなたの生活をどこまでも悪くする新しい画期的な手法を見つけることなのです。
こうしたことから、私は借金はいかなる犠牲を払ってでも避けなければならず、もし何かを買いたいときには、前もって稼がなければならないということを学びました。
私は大学を卒業するまでクレジットカードを持っていませんでした。仕事をしているときは、私は友人や同僚が思いっきり借金するのを冷めた目で見ていました。
彼らはまだ稼いでもいないお金を使い、高額なオプションつきのものではなく、ベーシックなテスラモデルを選んだだけで、自制できたと言って悦に入っているのです。
それ以来、私はなぜ借金がそれほど破滅的なのかに気づきました。借金は時間とお金のつながりを断ち切ります。そうなったとき、人々は破産に通ずるような決断をするようになるのです。