オンラインコンテンツの時代からリアルコンテンツの時代へ
朝倉:買収企業側の事情としては、ネットで完結したビジネスの世界が飽和してしまったことが大きく影響しているのではないかとも感じます。Uber然り、Airbnb然り、近年急成長ビジネスとして着目されているものに、ネットで完結しているものはほとんどありません。
日本でも、シェアリングエコノミーが取り沙汰されたように、リアルにあるアセットに紐づいたネットビジネスの存在感が一時に比べてより大きくなりつつあります。言い換えれば、ネットのみに自己完結したビジネス領域に相当頭打ち感が出てきているということですね。
今までオンラインコンテンツやメディア事業、広告事業で利益を得てきたネット系企業は、そのことをかなり自覚しているはずです。成長の余地が限定的であるという思いが、リアルなスポーツチーム獲得に向かわせているのではないでしょうか。
村上:スポーツコンテンツの特徴は有限性・希少性です。コンテンツの価値が年々上がっている現代において、リアルであるスポーツコンテンツは有限で、希少性が非常に高い上にクオリティが安定しています。そういったコンテンツを持てることがネット企業にとっての差別化になるのでしょう。
朝倉:リアルなチームは有限であり、ライブコンテンツである試合にはリアルの時間という制約がある。参入障壁が低く、無限のコンテンツを扱えた世界が成熟しきってきたから、今のうちに資産価値のある有限なリソースを取りにいこうという転換期なのかもしれないですね。
村上:以前は試合が行われている現地でしかコンテンツを消費することができなかったために、コンテンツが有限である一方で、消費者も有限でした。それが、デジタル化によって、ユーザーの数を大幅に拡大できるようになり、マネタイズの方法にも多様性がでてきたわけですね。これも、スポーツコンテンツの価値を高めている要因だと思います。
小林:スポーツチーム側にとっても、ネット企業の参入によってテクノロジーやIT活用のノウハウがもたらされ、チームのバリューアップが実現できるということが明確に見えてきたことは、心強い材料なんでしょうね。
*本記事はVoicyの放送を加筆修正し(ライター:代麻理子 編集:正田彩佳)、signifiant style 2019/12/13に掲載した内容です。