赤字覚悟からプロフィットセンターになったスポーツビジネス

小林:はい。企業のブランド価値向上に貢献するだけではなく、スポーツ事業単体でも黒字化でき、業績を伸ばせられるとなったら、やらない理由がないという判断になるのだと思います。

朝倉:「首位になったら選手の年俸を上げなければならないから、2位でいてくれ」と近鉄バファローズの球団オーナーは選手に告げていた、なんて逸話もありますね。
球団経営は万年赤字という印象が強かったわけですが、紐解くと、スポーツチームの運営に、近代的な経営手法が取り入れられていなかったということなのかもしれません。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):そうですね。私は前職の投資銀行時代にソフトバンクを担当していたこともありますが、当時同社が球団について認識していたのは広報・ブランド的な効果側面はもちろんのこと、コンテンツとしてのバリューでした。さらに、不動産ビジネスとしてのバリューも当時から意識されていたと感じます。

朝倉:ヒルトン福岡シーホークの開発などですね。

小林:ディー・エヌ・エーが横浜ベイスターズを買収する前は、観客動員数が110万人で12球団中動員数は最下位でした。それが現在では200万人ほどの動員数です。200万人という動員力は、非常に大きいですよね。

朝倉:1試合あたり平均して1-2万人ほどの人が動くわけですもんね。それに伴って、球場周辺の商業施設などへの影響も大きいことでしょう。

小林:野球に関しては視聴率の低迷が話題になりがちですが、200万人クラスがリアルで動く興行イベントという視点から見ると、ものすごく大きな可能性を秘めていることが証明されましたよね。ですが、野球球団は12チームしかないため、買収するチャンスもなかなかありません。そういった中で、サッカーやバスケットボールチームへとフロンティアが広げられているという流れだと思います。

朝倉:バスケットボールチームの買収は割安だとよく耳にしますね。二次利用のしやすい体育館で試合を行うことができますし、チームの人数も少ないので、年俸の合計額もそれほど嵩まないと。なにより、生で見るスポーツとしても非常に迫力があって楽しいそうですね。

小林:他のスポーツといえば、先日ラグビーのW杯が行われ、日本でもラグビー熱が高まりましたが、プロリーグが発足したら従前よりも多くの観客動員数を見込める可能性もありますし、ビジネスとしてもポテンシャルを秘めているように思います。